徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

ドイツからいとこの子供がやってきた

僕のいとこは軒並み僕より年上だ。

親父が四人兄弟の末っ子の上に40の時に生まれた子供が僕だから、僕が生まれた頃にはいとこたちは成人どころか結婚しているレベルで年が離れている。いとこの中の一人がドイツに嫁ぎ、その子供が今日本にやってきている。つまりドイツと日本のハーフ。年齢は僕の三つ年下である。向こうの高校を卒業したあと、世界を見て回る的な趣旨でやってきた。兵庫の城崎温泉で8か月間修行して、経験を積んだ後、ドイツに戻って就職を考えるらしい。

喋るのにはあまり苦労しないが、漢字は小学三年生くらいまでの文字しかわからない。もちろん難しかったりややこしい言い回しをされたらお手上げである。こんなブログなんて読めたもんじゃないだろう。日本人でも読めたもんじゃない。

そんな彼が単身日本にやってきて、8か月間、見ず知らずの外国人が住み込みで働く温泉で寝食を共にするというのだ。19歳になるとはいえ、もうドイツの法律的には立派な大人だとはいえ、大人でも気が引けるようなことをやっていると思うわけだ。彼は。

正直、なんてタフなんだろうなと思う。確かに日本に親族はいるから全く身よりがないわけではない。とはいえだ、兵庫に身寄りはもちろんない。プチ天涯孤独を味わえてしまう。なかなかできたことではないだろうよ。そんなことは。日本国内で言葉に何一つ不自由ないくせに、躊躇の末やっとこバイトを始めんとする男がここにいるというのに。なんてたくましいんだ。

そしてそれをたやすく容認するドイツの就職活動のスタイルも魅力的である。日本でいえば体のいいフリーターである。学生でもなければ、働いていない人に対する風当たりが強い日本ではなかなかできはしない芸当である。ドイツじゃ割とポピュラーなことらしい。就職なんていつでもできるよって言ってた。リクルートの大学生を4月ごろに躍らせる課の連中に聞かせてやりたい。ねえ人事。

国外に出たことがないドメスティックな人間が、インターネットとかで外国の事を知ったかできる時代だ。僕もその中の一人だし、これからもしばらくはその中の一人を生き続けると思う。だから何とも言えないんだけど、旅とかで世界観変わるって言ったってそこまでの事なんだろうかなと感じてしまう。ブロードウェイを見て、アビーロードを歩いて、バンコクの路地を歩いて。そこまで人生観が変わるのかと。覗き見てるだけじゃん。だけどただ見るだけじゃなくて、異国の地にじっと腰を下ろして経済活動をするってことは確実に何か変わるものがあるだろうなと思う。まず言葉を深く知らないと生きていけないだろうし、文化も作法も学ばなきゃならないだろうし。留学に駆り立てられる人の気持ちがすごくよくわかる。行きたかったな、気合が足りていれば。

きっといとこの息子の彼も、8か月後には何かしらの成長を遂げてドイツへと帰っていくのでしょうよ。言葉も文化も学んで、異国で生きていく術を身に着けた暁には母国に帰ったらなんでもできるはずでしょう。たくさん不安があるんでしょうが、頑張っていただきたいものです。三つ年上のお兄さんからのささやかなエールを送ります。暇があれば、城崎温泉に行きたいな。一泊二万円。お兄さんも一生懸命働きます。