徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

天皇賞を戦った

今日は世の馬ファンたちが心待ちにしてきた大イベント、天皇賞の日だった。

天皇賞である。天皇である。もう権威しか感じない。Do you enter the 紋所 into your eyesもいいとこだ。

 

初めて馬券を買った。今日の今日まで馬たちとはそう接点のない生活をしてきた。叔父は競馬が高じて乗馬を始めるというハイスペックな馬好きだが、その影響を何一つ受けることなく、22歳になるまですくすくと育ってきた。

ハイスペック馬ラバーの叔父の影はそんな中でも感じてはいて、度々、馬で勝ったから焼き肉だ、ビールだ、なんだかんだと連れて行ってもらったりはした。しかし、自分が馬券を買うという発想はなかったし、ブエナビスタがどうだオルフェがどうだといわれたところで、その語感の良さで覚えている程度のそれでしかなかった。

たまに叔父が我が家で馬を見ることがあった。馬は速かった。まじで。陸上やってる関係からなのかなんなのか、馬の速さにはあこがれた。奴らのケツはやばい。マジでやばい。ふくらはぎなんてほぼ無い。皆無といっていい。アキレス腱だけで生きてるふくらはぎである。太もももほとんど手羽先レベルのそれだ。コラーゲンたっぷりなのが皮膚越しにでもわかる。からのケツがやばい。筆舌に尽くせないところがある。地面蹴るにも足を引き付けるにもケツは重要な部位なわけだ。人間もそう。足速い人は皆総じて、ケツの筋肉が充実している。インナーマッスルがどうだこうだと言いながら、重い物もったりバランスとったりして鍛えていく。しかしお馬さんはウエイトとかしない。天然ヒップがビッグだ。才能の塊である。

憧れは抱いたものの、馬を愛すまでには至らなかった。

 

そしたらなぜに今馬券かと。気が向いたからです。

 

天皇賞があると。最初は東京競馬場に行こうかと思った。このブログのスタートの記事に書いたんだけど、我が家は世田谷と調布の境にある。府中にある東京競馬場なんて目と鼻の先。ただ天皇賞という馬界の盆やら正月ともなると、混雑を極める。極まるなんて言葉はぬるいほどの混雑である。 

覆水盆に返らず。 - 徒然雑草

 これ記事。

混雑を回避したいのは田舎者の性なんだろう。無意識に競馬場に行くという選択肢をはじいていた。ウインズっていうまぁいわゆる馬券買える競馬場の支店みたいなところで勝負をすることにした。

 

何はさておき、予想である。

今回の大人気は15枠からのイスラボニータ。まだ若いけど、なんだ、ユース世代で夢想してきたスーパールーキー的な存在らしい。それに乗る騎手のルメールっていうのもなんだかテクニシャンで、それも相まって本命と目されているらしい。

それを追うのが9枠のフェノーメノと1枠のジェルティルドンナ。歴戦の戦士らしい。よくわからんが。さらに続いて4枠のスピルバーグだ、8枠のなんだかんだと有力馬がそろっていた。

叔父にアドバイスを賜り、新聞を買い、吟味に吟味を重ねて、若干2日ほどの英知を詰め込んだ十五通りの必勝パターンを導き出した。オール100円ずつ賭けて、1500円。これで負けないっ!100円を錬金してやるんだっ!

 

ウインズはたばこの煙と欲と落胆とがないまぜになった不健康な空気が充満した場所だった。昔碁をやっていた時の碁会所の空気を思い出した。懐かしさに浸りながら、ウインズのおばさんに馬券の買い方を聞いて、マークシートに必勝パターンをマークしていった。

そこであるおっさんに出会った。

ここがウインズじゃなくて高架下だったら完全に家なき子と思われて不遜がない叔父さんは、突然彼の競馬論を語りだした。

3と5は来る。何より、14の調子がすごくいい。1と9は実力が本当にあるから買って損はない。15は来ない。騒がれているだけである。

ほほう、なるほど。ここひと月は風呂に入っていないであろう風体は、競馬予想に関しては絶大な説得力を感じさせた。おっさんはひとしきり競馬論を語った後、わしの友達に聞いた話なんだがな。という意味深な一言を放って僕の前から姿を消した。受け売りだったらしい。

ただ受け売りでもベテランの話を聴けたのはありがたかった。15はやめよう。必勝パターンから15番を削って14や3を組み込んだ必勝パターン改を発券した。

 

スタートした。

15が来た。

 

僕の軸として構えていた4と1と、15が来た。

悔やんだ。ものすごく悔やんだ。おっさんに対しての、なんだったんだあいつ感が高揚するとともに、競馬なんてもうやってやるかとの思いも高揚した。1500円が。あぁ、1500円が。我を通せばよかった。おっさんのいうことなんて聞かなければ。

 

帰り道、再来週のエリザベス女王杯の情報を検索している自分がいた。

再来週でこの負け分を取り返せばいいと、そう思うんだ。うへへ