母親がフォークソングどストライクの時代に生まれた結果、僕もフォークソングが好きになった。
かぐや姫が大好きだ。南こうせつ、正やん、ぱんださんの3人は聖天大使かのように教えられた。本当にちっちゃい頃から、刷り込まれるように曲を聴かされてきた。
自発的に音楽を聴くようになって、一度はフォークソングがダサいと思う時期を過ごした。オレンジレンジだのなんだのこそ正義だと。他ののんびりしたラップっぽくない音楽なんてゆっくり過ぎてきいてられないと。今考えたら親への細やかな犯行だったような気がする。
高校に入学する頃、もう一度試しにフォークソングを聴いてみた。伊勢正三を聴いた。なごり雪を作った人だ。すごく良かった。フォークソングは人に共感を求めない。ひたすらに名前も無いある人の、第三者の物語を眈々と語る。人生とはなんたるかとかを変に語ったりもしない。少なくとも正やんは。
そして何より声が好きだった。正やんのものの見事に澄んだ声に心を惹かれた。けど、友達にフォークソングが好きという人が一人もいなかったから、声を大にしては言えなかった。BUMPこそ全てと、建前を建てた。
その頃丁度ギターを弾き始めた頃だった。正やんの曲、かぐや姫の曲を沢山コピーした。誰に聞かせるわけでもない曲がひたすらに増えた。
叔父はフォークソングが好きで、バンドを組んでたらしいけど、早くに死んだ。僕が生まれてしばらくして亡くなった。
おじさんが生きてたらなぁと思う。自分よりずっとずっとギターがうまい、母と自分と同じ趣味のおじさんが生きてたらなぁと思う。一緒にギター弾きたかったなと思う。どんなに人生に色がついたかなと。
できることなら、なんにも押し付けがましくない曲を書きたいなって思う。近頃世を回る曲の大半は人生とはなんたるか、恋とはなんたるかを語る曲が本当多い。んなんどうでもいいんどよねまじで。お前の教訓なんぞ聞いとらんと。あー、そんな人生もあるんですねって思わせてくれるだけでいい。人間誰も人を啓蒙したくて生きてるわけじゃないじゃん。
そんなことはどうでもよかった。
何が言いたいかって、夜に聴く正やんの殺傷能力でした。
日に二桁もいない読者の方、ぜひ伊勢正三をYouTubeで検索してみてください。出来れば、1980年より昔の音源を。本当に綺麗な歌声で、名も無き人の人生を歌ってくれています。1980年以降だと、喉を壊してしまって全く違う歌声になってしまっているので、お気をつけ。