徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

語呂

音の響きは面白い。

20年ちょっと生きているのだが、そんな申し訳程度の人生の中でも、これは!っていう言葉がいくつかある。

 

小さなころ、ほんと1歳くらいだと思うんだけど、父が読み聞かせる「モモンガ」って本が好きで好きでたまらなかった。

何が好きだったかって、響きである。それでしかない。空を滑空する哺乳類の姿なんてどうでもよかった。響きさえあればよかった。

モモンガ。

ももん まではなんだかふわっとした、ほよほよって感じの響きなのに、最後で が である。濁音で締めるなんて卑怯だ。

ギャップ萌え。そんな言葉を当時の僕は知っていたのかもしれない。

 

モモンガとの出会いから数年、ゴレンジャーと出会う。

ヤンバラバンバンバン♪ ヤンバラバンバンバン♪

イケナイ薬でも服用しないとこんなフレーズをオープニングに持ってこようなんて思わないだろう。

例によって音の響きに惹かれてゴレンジャーにも惚れるわけだ。

 

このころから、濁音の中でも破裂音が好きだということに気が付き始める。

バビブベボ。

特にこの五音が好きらしい。

保育園に通い始め、親と離れることにものすごい嫌悪感を示していた僕に、母親が寂しくない呪文として教えてくれた、ビビデバビデブウ。

ディズニー映画をほぼ見ていない僕にとって、ビビデバビデブウは母のオリジナルであった。

何よりその濁音破裂音の大行列に大きな安心感を抱いたものだ。

 

サッカーが好きで見始めると、人命の語呂の面白さにも魅了された。

当時セリエで大活躍していたアルゼンチン代表フォワード、バティストゥータ

通称バディ。

ラスボス感たっぷりな響きにたがわぬ決定力だった。痺れる。

ちょっと遡ったらバッジョなんてスーパースターもいた。イケメンなんだけど、名前からしたら全然イケメン感は漂ってこない。牛のニックネームみたいだ。

イタリア人の「っ」のはいる場所の独特さにも驚かされた。

ペッロッタカペッロ、ペッソット。

発音のしにくさと言ったらない。そこがいい。

アフリカ系黒人選手の名前の魅力も知ることができた。

ドログバ、シムボンダ、オコチャ、オカカチュカ。

濁音だけが人生だけではない。チャチュチョの入るタイミングいかんでも十分魅力的になることを気付かせてくれた。

 

これまでの語呂のスイートスポットを満たしてくれる最高の言葉がある。

哺乳類から始まり、戦隊ヒーロー、イタリア、アフリカと飛び回った語呂の旅の執着地は古き良き日本に有った。

 

ボットン便所

 

これである。

破裂音から始まり、即促音。トンで落ち着いたかと思えば、再びの破裂音。しかもそれに続く言葉が「ん」である。「破裂音+ん」この組み合わせほど力が入る言葉はない。締めは濁音と拗音、じょ。

完璧である。

これほど美しい言葉が日本に存在したなんて。それもとても美しいとは言えない場所をつかさどる言葉として。

 

落ち込んだ時は心の中で唱えます。

ボットン便所。