やる気スイッチ、君のはどこにあるんだろう。
クリティカルヒットを飛ばした某塾のCM。一度は口ずさんだ人も多いのではないか。スイッチなんてわかりやすくポチっとできるものでやる気が出るなら、みんな有名大学に入学して、医者とか弁護士とかに収まって行ける。世の中そんなに甘くない。
やる気スイッチ的な何かが全く存在しないかというと、そんなことはない。改札の前で手をつないだら全力で少年になったスキマスイッチもある。
そして、本日押ささったのが掃除スイッチ。これは確実に存在する。間違いない。
普段はなんにも気にならずに生活している部屋。埃は舞うし、積もるけど、たまーにハンディモップで拭き拭きしてやるくらいで許せる程度のものだ。服とかが散らかっても、ちょろっとたたんでやればそれらしく見えるし、本が散らかっても平積みしてやれば整いだす。
微修正を繰り返し続けたとて、見えないところで確実に埃はたまる。汚れる。見えないふりをすることはたやすい。だって俺のせいじゃないもん。俺が別に埃を積もらせているわけじゃないもん。だったら掃除する義理ないじゃん。長い間、そうして現実から目を背け続けていた。
掃除スイッチ。どうやらこれは罪悪感から押ささるらしい。自然と積もる埃じゃ押ささらない。自ら不慮の何かによって部屋を汚してしまうようなことがあると、一気にスイッチが入る。
今日は、朝風呂に入った。昨日の消化を促したい。そうだ、血流を良くしてみよう。あっつい風呂に半身浴。強烈に汗をかき、ポッカポカになった。その後、昨日面倒で洗わなかった髪の毛とかを洗う。我が家はユニットバスだ。シャワーカーテンも入居後しばらくで面倒で外したため、トイレサイドに水を飛ばさないのはテクニックが必要となる。それでも飛ぶことは飛ぶんだけど。
不意に、手が滑った。シャンプーが絶妙なオイルとなり、シャワーヘッドがグルンとまわった。水流フルスロットルにしていたため、けたたましくシャワーヘッドが暴れ回る。蛇だ。獅子舞だ。恵みの雨はバスルーム一帯に降り注いだ。
その時、掃除スイッチが入った。
こうなったらもう全部洗っちまえと。ピッカピカのバスルームにしちまえと。
バスルームの壁中にバスクリーナーをぶちまけ、猛烈に洗う。見違えるほどにぬめりもくすみも取れたバスルームに半裸でたたずむ。なんて気持ちいいんだ。掃除ってなんて気持ちいいんだ。
一度入ったスイッチは、バスルームだけの綺麗じゃ収まりきらなくなる。火の手が回るように、綺麗への欲求が引火していく。
こうなったら部屋を。部屋全体をピッカピカにしてやろう。いらないものは捨て、あらゆる家具をどかして埃を除去していく。
埃は思ったよりもたまっていた。掃除機がギブアップした。コロコロは一往復で機能不全に陥った。ごめんよ部屋よ。ここまで見過ごし続けた僕を許してくれ。
午前中いっぱいを使った大掃除により、見えないところがピカピカになった。別に勝負しない時でも勝負パンツを履くと気が引き締まるように、勝負部屋へと生まれ変わった。見えないところが大事なのである。心だ。気持ちだ。
せわしく動き回った結果、昨晩の消化不良は消えうせた。
お腹すいた。ここからは空腹を楽しもうと思う。
いやーまじで気持ちいい。