徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

DOOR OF GOD

異国情緒の溢れるなんちゃら。そんな文句はよく聞くが。なぁ、神戸、君を差し置いてこの文句は使えないよなぁ。

昨日の夕刻、神戸に着いた。実は高校の修学旅行で訪れているはずの神戸。何一つ思い出がないのは、寝不足ゆえか、若さゆえか。この上なく新鮮な気持ちで降り立った。

洗濯もしたいし、ゆっくりしたいしと、ちゃんとしたビジネスホテルを予約。荷物置いたら観光である。

ホテルのフロントの人に何処行けばいいか聞く。夜であれば中華街がオススメです。ほう。中華街。横浜長崎神戸が日本三大中華街だそうで、そいつが徒歩10分の場所にあるそうで。そんなもの行くしかない。数年前友達に流されたか、何も考えてなかったかして行かなかった中華街に飛び込む。

10分強歩いて辿り着いた中華街。人で溢れかえっていた。通り一本ずれたらただのプロムナードなのに、中華街だけ満員電車よろしく大混雑だ。たった200mちょっとの中華街だからな、密集するんだろな。

人混みに入ってしばらくはなかなか馴染めない。どうも人にささくれだってしまう。超馴れた勧誘をしてくる中国のおばちゃんたちに乗り切れない。いかん、何しに来たんだ俺は。楽しみに来たんだ。ここでコミュ力を発揮しないでどうするんだ。景気付けのストロングゼロを煽って戦闘態勢である。さぁ、誰でもなんでもこい。

可能な限りのキャッチのお姉ちゃんおばちゃんと話した。出来たてだよーの声にはもれなく寄って行った。幾つの北京ダックを勧められたろう。幾つ小籠包を食べたろう。舐めるようにあらゆる露店に立ち寄った結果、今となってはどれがどの味だかわからない。ゴメンナサイ。三宮方面から入ってちょっと行ったところの左手にあるフカヒレラーメンと、中腹右手にある小籠包と北京ダックが美味しかったな。おばちゃんの顔をみたらこの店ってわかるけど、店構えじゃ2度とたどり着けない であろう、ワンナイトグルメだった。気がつけば、お祭り気分と酒気がかけ合わさって、なかなかの散財を果たしていた。なるほど、これがキャバクラないし夜の店の原理か。気をつけよう。


翌朝。

ビジネスホテルの醍醐味であるモーニングビュッフェを食べる。昨晩いいだけ中華を貪ったのちのビュッフェ。んなことしらんわ。食べる。

何故にここまでホテルのモーニングは美味いのだろう。雰囲気に誤魔化されている部分を差し引いても美味しいはずだ。

蠕動運動を促して有り余る分量の食事を取り、中華街の逆手にある北野異人館に向かう。

ここには確実に修学旅行で来ているはずで、断片的に記憶は残っているものの、まとまったそれは全くない。面白くなかったのだろうか。どうなのだろう。七信三疑くらいの期待をもって、坂を登る。

坂の上にある異人館群は、南の中華街よりも外国だった。石畳が敷き詰められた道の両脇に建つ、年季の入ったスウェーデンハウスのような異人館。明治時代活発だった神戸港での貿易。その関係で北野に貿易商邸がたくさん残っているらしい。

山の中腹に北野の街があるので、横ばいの移動以外は坂道である。しんどい人にはしんどいのだろうが、坂を見るとワクワクするたちだ。なんと言うか、登らなきゃいけない使命感に駆られる。高校時代に坂好きな顧問を持ったがゆえ、変な性壁を植え付けられてしまった。許すまじ。

ひたすらに上を目指すと、オーストリア館を発見した。モーツァルトの足跡を追えるらしい。これは興味ある!しかし平然と入館料を取る構えに尻込みしてるとチケット売り場のおばちゃんが話しかけてくる。

お兄さん何処から来たの。あ、東京です。あらー、おひとり?そうです、一人旅なんです。男の子はいいわねー、楽で。本当ですよね、フラフラさせてもらってます。オーストリア興味あるの?あ、昔ピアノやってて…。そうなの、もう是非見て行って!ここ500円だけど、デンマーク館とオランダ館もセットで1300円で見られるパスポートがお得でかくかくしかじか…

一人旅の心の隙間突かれた。気がついたら1300円払っていた。昨日の散財の反省は全く出来ていなかった。

なんとかもとを取ろうと必死こいたおかげで、3つの館を回り終わった頃にはオーストリアハプスブルク家のあらましと、モーツァルトの半生と、バイキングの生活と、オランダの生活様式について人より少しだけ詳しくなれた。ニッチな知識だ。

さらにふらふらしてみるも、やっぱり修学旅行の記憶は思い出されない。よほどなにも考えないで回っていたらしい。量産型高校生である。ごめんね先生。



三宮高架下の、北川景子の顔ほどの大きさのジャガイモが丸々一個入ったカレーを食べ、まったりしてたらバスの時間だ。

鳥取に向かう。部活の友人が待つ。

四年間通してアレルギーになるんじゃないかってほどに顔を見続けた友人だ。会わなくなれば会わなくなるものである。ちょっと懐かしい気がしている自分が信じられない。

神戸の異国情緒を離れ、バスは畑と山と鉄塔が並ぶ日本情緒の真ん中を進む。山陰なんて名前が似合わないほどに晴れた空を進む。