徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

TabiがTsuiえる1時間前

名家でビビった。

どうやらでかい家らしいと言うことは聞いていたけれど、そんなにぶっ飛んだ家だとは思ってなかった。

築400年、元禄時代に大先祖さんの田中作右衛門が建てた家に今も住んでいた遠い親戚。文化財かと。見学旅行かと。


滋賀県栗東市。父方の祖父が生まれた場所。祖父と曽祖父の家は昔からの百姓の家だった。

一斗六反の土地をもって、農業を営んでいた地主だったそうだ。この一斗六反がどれほどのものか。

今でこそ土地を売ったりなんなりしたりして小さくなったようだが、それでも敷地の中に屋敷、蔵が二つ、別途の家が一つ、ガレージが一つという、とんでもない邸宅にお住まいになっていたわけだ。


会うことができたのは、祖父の姪(父の従姉妹)、甥の奥さん(父の従兄弟の奥さん)と、その息子さんたち3人。

父の従姉妹にあたるおばさんが曽祖父と祖父に詳しく、生前の話をたくさん聞かせてくれた。

曽祖父はそもそも相当の勉強家だったらしい。それでまた今で言うベンチャースピリットに燃えたぎっていたらしく、北海道だけじゃなく、樺太千島の方まで睨んでいたと言う。手付かずの土地が残っているところで事業を起こしたい。しかし後ろだてがいる。そこで国鉄勤めだった曽祖父の兄に当たる方が出資。兄弟仲良かったそうで、倒れる時は共倒れだと思い切って投資したらしい。

無事、北見で事業に成功した曽祖父は度々滋賀の実家に戻り、仏具を奉納したり、当時珍しいカメラだなんだといった機械を持ってきては集落のみんなにプレゼントしていたとのことだった。随分と豊かな生活をしていたみたいで。

そんな頃合いで、跡取りがどうこうと言う話が浮上する。曽祖父とその妻との間には子供はできなかったため、兄弟仲もあり、曽祖父は兄の末っ子を容姿にもらった。それが僕の祖父だ。当時曽祖父の兄の元には男の子がいたため、末っ子を養子に出したのだが、早くにその長男が亡くなってしまったがゆえに、長女の元に養子をもらうこととなる。養子ラッシュ。

つまり僕の元には直接はベンチャースピリットに滾った曽祖父の血は流れておらず、国鉄勤務の堅実な曽祖父の兄の血が流れているわけだ。なるほど、サイバーチキンにもなるよなそりゃ。

そんな話の流れで、屋敷探検に出る。20センチはある分厚い土壁で作られた蔵や、離れを見て回る。

何しろ400年前から変わらずある家なので、曽祖父の代から当然のように間取りなどは変わっていない。曽祖父はここでよく寝っ転がって昼寝をしていたとか、縁側に腰掛けて新聞読んでたとか、あったこともない遥かな先祖の跡を何と無く追う。下手に二条城とかで大政奉還を思うよりもずっとリアリティがあって、とりあえず寝っ転がってみたりする。


ひとしきり回って、お墓参りに出かける。田園風景にポツンとある寺。その外れにある墓地。明治年号よりも江戸時代の名前の方が多いような墓である。途轍もない。

墓地の全景を見渡せる場所には大病院が構えている。入院中に見渡す墓地とかなんのジョークにもなりはしない。なんつー立地かと。

病院に背を向けて、一先ず北海道の方の一応の繁栄と、参上したことを告げ、墓を離れる。


明日仕事と方々が帰る中、宴会タイム。二男さんの株の話を聞く。右から左へローリングサンダー。ごめんなさい難しかったです。


流れで泊めていただき、翌朝。

父の従兄弟の奥さんの手料理を頂く。身体が弱いからと食に気を使ってるそうで、ものすごい健康志向な食事を頂く。高タンパク。作ってくれたごった煮のようなお汁の味は忘れません。ありがとう。

その後、衝動的に家系図を書き出し、ある程度形になったところでさようならをした。



旅が終わろうとしている。

突発的に入った東京での用もあり、夕方にはもう東京にいる計算だ。そんでまた計算が外れることは日本にいる限りほぼない。からして、夕方には旅が終わっている。

旅の最後に祖父と曽祖父の生まれ育った家をみて、その話を聞けてよかった。沼島では個人的なことまではわからないままだったが、栗東では家系のものすごくミクロな部分まで知ることができた。行動、癖、兄弟仲、北を目指した理由。知恵と勇気が備わった人を曽祖父にもてて、やはり自分に自信を持つことができた。

さらに皆それなりにガタイが良かった。これが一番の収穫かもしれない。180オーバーはいなかったものの、滋賀の血が強めに出たのだろうな。この身長は。それを遺憾無く発揮させてくれた両親の栄養ぶち込み子育てにも感謝したいものだ。



旅の終わりは新しい度の始まりが云々とか言うけどもだな、これから物件選びの旅が始まる。鉄筋コンクリートで南向きの部屋がいいという知識と、即決即断の勇気を持って、不動産会社の提案の嵐を乗りこなそうと思う。

見ててくれご先祖さん。俺、いい部屋みっけるよ。