徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

夢追い人

ある一定のレベルの大学に入って、ごくありきたりなレールの上に乗っかった学生生活を過ごしていると、優良企業や大企業に入ることが何よりの幸せだとする節がある。年収や福利厚生、やりがい云々で仕事を見定めて、個人個人の趣向に合わせて、各業種でのバトルが勃発していく。
平たい人生の幸せという面では、人に雇われて後、その会社で登りつめていくことに勝ることはないかもしれない。
ローンも組める、子供も育てられる、家も買えればマンションも考えられるし、出世次第では会社も乗っ取れる。安定と夢がワンパッケージで叶う素敵な人生だ。
僕もそれを目指した。そしてそれなりの成果を得た。
 
最近しょっちゅうライブに出てるのだけれど、共演者の中でそうした平たい幸せに浸かっている人は極めて少ない。音楽で何かを成そうとしている人がとても多い。日々はバイトで繋いで、出来たお金でそこら中のライブハウスを飛び回って、そこで知り合いを作った上でまた飛び回る。CDを作って各地で売っては名前をばら撒いて、曲を聴いてもらう。これがスタンダードだ。
平たい世界では出会うことのない考え方かもしれない。
 
幸せはお金では買えないってよく言ったもんだけど、なるほど色々な人生もあるものだなと考えさせられる。少なくとも就職活動に凝り固まった考え方からは少し離れて、俯瞰した目線から考えることができると思う。
ローンも組めなければ、売れることもないかもしれない。殆ど将来は保証されてない。開かれている可能性としては、コネの強いライブハウスに収まって働きながら音楽活動を続けたり、スペシャルなテクニックを持っていたとしたらスタジオでプレイヤーとして活躍したり。普通にバイトの方で収まっていく人も多いだろう。
 
だからどうした。知るかバカ。
やってみてわかる。自分の曲を不特定多数の人に聴いてもらう喜びは、快感とかそういった類の感覚の中でも上級のものだ。人に聴かせられるものにする努力も、自分から出て来た曲なのだから全力でそれを理解しようとするし、可愛がれる。酷評や無興味は辛い。しかしそれすらも血となり肉となる。もっといい曲を、誰もやってないことをと模索する。
本当に好きだから、どんな些末な諸々も厭わない。好きなことを生業とするのは諸刃と言われるが、幸せ指数からすると相当なものがあるようである。
 
青写真ばかりを抱き続ける夢追い人になってしまうことが一番まずい。しかしそれは、音楽とか演劇とかに限ったことではない。冷静な自分がいないことにはどの業界でもどんな仕事でもうまくいくことはない。大学生の人生経験程度でわかることなんだから、社会に出たらそんなもの当たり前だろう。
であれば、冷静な自分がいるのであれば、踏ん切りつくまでアホほど好きなことすることが強烈な選択肢の一つに入ってもいい。それがうまくいくもいかないも、その後の人生も全部が自分のものだ。いいじゃん。
 
音楽家や俳優、スポーツ選手といった誰もが一度は夢見る素敵職業を目指すことをしなかった自分として、純粋かつ冷静に目指している人たちを羨ましくも思う。反面、リスクを負わなかった選択を誇らしくも思う。結局はもう二回か三回人生があれば、そのうちの一つは徹底的に青写真チェイサーになりたいなとかずるいことを考える程度の人間だ。
 
職業選択や大志の対象に貴賎はない。袖振り合った誰かが大きな何かをつかむことを、切に願っております。
大事故が起こって私の元にビックドリームが転がり込んでもいい。一向に構わない。
 
そういうわけで、8日にライブやります。高田馬場です。敵地に後込んでいく感じが半端ない立地ですが、頑張ります。