徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

思い出臭

松田聖子Sweet memoriesの歌い出しで、懐かしい痛みだわと歌っている。ガガガSPは線香花火という歌の歌い出しで、懐かしい匂いがしましたと歌っている。

懐かしさはあらゆる五感に結びつく。懐かしさというか、あらゆる記憶は五感によって記憶されている。五感以外でのツールを用いて記憶されている情報は極めて少ない。大体が景色や音や匂いや触感、味。不意に思い出す思い出も、五感からの刺激があって引っ張り出されてくる。

今住んでいるマンションの隣に、ちょっとした自動車工場がある。北海道の土地感覚で二世帯住宅が建つかなくらいの狭さの工場だ。朝必ずその前を通りすがる。大体すでに作業員さんたちが仕事をしている。そこで、日によって、ドラム缶の中に火をつけて、紙くずと思われる廃棄物を燃やしている。木くずとかも入っているかもしれない。

その匂いが、強烈に記憶を引っ張り出してくる。

小学生の頃、母の実家に帰省していたころの思い出だ。母の実家は鉄工所である。北海道の土地感覚で、二世帯住宅が4件は優に立つであろう、なかなかの規模の鉄工所。物々しい機械が陳列されている工場のことはあまり好きじゃなかった。根っからの文系だった。

年二回遊びに行っていた。夏と冬。夏は例の本州の匂いを強烈に感じでいた。あれも懐かしさを引火させる恐ろしい香りだ。

祖父が社長をしていたのだが、当時ごみの分別にそんなにうるさくなかったこともあって、社長直々にちょっとしたゴミは庭の焼却炉で燃やしていた。焼却炉にごみを突っ込む手伝いをした覚えも何となくある。

その匂い。絶対にあまりよくないものが燃えているであろう煙の匂いが、今自動車工場からもする。特別いい思い出なわけでもない遥か昔の焼却炉の記憶が思い出されて仕方がない。それでもなんだか切なくなるのだから、よくわからないものである。

 

曲から思い出される記憶も強烈だが、匂いもすごいものだなぁと、しみじみ感じた。