徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

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九州の雨音は首元に突きつけられる切っ先を研ぐ音

九州が今豪雨でとんでもないことになっている。夏は南、冬は北で天からの恵みに事欠かない。心無い恵みである。九州で豪雨と聞くと、喉元に切っ先が付きつけられている気になる。台風根性が染みついているのだろう。南から脅威が来るのを体験的に知ってしまっている。

雨に唄えば。雨を見たかい。雨の日と月曜日には。山ほど雨の名曲があるというのに南からやってくるそいつの事を一向に好きになれそうもない。就活しているとき、集団面接で一緒になった女の子が、プラス思考をアピールしてこう言った。

「私の長所はプラス思考です。今日のような雨の日だと、どうしても浮かないい気分になってしまいますが、傘にあたる雨音を聴いて、楽しい気分でいることができます。」

なんてピュアな心の持ち主だろうと思った。傘にあたる雨音。傘にあたる雨音である。それで楽しくなれる感性の持ち主ならショパンにだってなれただろう。なんで就活なんて右習え活動をしているんだ。つーかあなたさっきまでガンガンアイポッド聞いてたやないか。雨音聞こえないやないか。そもそもプラス思考の証拠にその喩えはどうなんよ。

当時はこちとら必死だったから荒んだ目でしか見られなかったが、今思う、彼女は正しかった。雨音で楽しめる感性は大切だ。

なにしろ彼女の耳に届く九州の雨音は、切っ先の研ぎ澄まされる悪魔の音色ではなく、傘にあたるルンルン痛快な音色に聞こえているのである。これは雨大国日本に生きる上でどれだけのメリットか。計り知れない。

 

彼女は今どこで働いているであろうか。嘘だとしても、たとえ嘘だったとしても、自分が面接で雨音について語ったことを覚えているであろうか。

あなたのための雨が、明日降るよ。きっと。

俺は嫌だけど。


前奏曲 作品28の15「雨だれ」 ショパン - YouTube