徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

MENU

なぜ湯たんぽは低温火傷を誘発するか

日曜診療の病院は、やはり大盛況だった。10時開院、10時来院、その時点で2時間半待ちである。これを大盛況と呼ばずになんという。クリスマス真っ只中のディズニーとも、ゴールデンウィーク真っ只中の富士急ともタイマンを張って負けない長蛇がそこにはあった。

しかも待つのは楽しい楽しいアトラクションでも、みんな大好きミッキーマウスでもない。怪我の現実と白衣羽織ったドクターマリオだ。何故に2時間半待つのだろう。ああ、何故だろう。湯たんぽなんか仕込まなきゃよかった。本気の後悔だ。
2時間半好きに使っていいと言われたので、とりあえずシャツをクリーニングに出して、切れそうなボディソープ等々を買って一旦帰って、再来院したのちはオブジェの如く読書に浸った。
果たして火傷の状態はどうなのか。痛い。この痛みは火傷の痛みか。それとも、ばい菌の痛みか。余計な考えにうわ滑る文字。何かを読んでいたはずなのに見落として同じページを何度も読み返す。ページめくらないから余計にオブジェだ。
約束の2時間半を回り、2時間と4分の3ほどだった頃、呼ばれた。呼ばれてからは早かった。15分もかからずに診察を終え、外に出ていた。
 
結果であるが、低温火傷も一晩分というなかなかじっくり煮えた火傷のようで、長く通院してくれとのことであった。
そもそも低温火傷とは。医者は料理で喩えていた。一般的な火傷は、瞬間的に炙られたようなものであり、表面がこんがり焼けている状態。対して低温火傷は、ゆっくりじっくりと長い時間火にかけた状態で、煮物に近い焼け方らしい。料理で喩えられると非常に美味しそうな低温火傷だが、皮膚や人体への影響は甚大で、何しろ味が染みるがごとく火が奥まで通ってしまっている状態であるからして、その炎症は皮膚にとどまらず、脂肪や骨にまで達することがあるという。そのくせ、皮膚の状態からはどこまで火が通っているかが読みにくいため、経過を見ながら対処していくしかないと。なんて厄介な火傷だろうか。
低温火傷の中でもトップクラスで被害報告が多く、重症化しやすいのが、湯たんぽだという。被害者の会でも設立してやろうか。いや、被害者でもあり加害者でもあるからダメか。
なぜ湯たんぽは重症化しやすいのか。
寝るときに使う人があまりに多いからである。
湯たんぽはそもそも、一晩を共にする代物ではないと、医者は言う。あれは寝床を暖めるだけのもので、寝る前には寝床から出さねばならない。でないと、まぁ、こんな風になると。また、被害状況が全く読めないのだ。一晩中くっついているような重症かもしれなければ、明け方だけちょっとくっついて少しだけ火が入っちゃっただけのことかもしれない。本人もわからなければ、患部を見てもわからないわけだから医者もわからない。骨まで焼けているかもしれなければ、皮膚だけかもしれない。対処が非常に難しいそうだ。
 
化膿止めの飲み薬と塗り薬をもらい、来週までには絶対に再来院しろとのことで、まとまった。失ったのは、5000円ほどの初診料・薬代と、皮膚細胞。あわよくば、脂肪。
得たものは若干の小説の進捗とやけど跡。そして、低温火傷の知識と湯たんぽの正しい使い方。
恐らく跡は残るだろうと、医者は言った。まぁ、美脚を目指しているわけでもなんでもないから、別にいい。むしろ、やけど跡を通じて、今後湯たんぽの正しい使い方や低温火傷の恐ろしさについてを吹聴できるから、5000円なんて安い授業料だ。世の冷え症に悩む皆様方に、知ってもらいたい。血を捧げた分、学んでもらいたい。湯たんぽ発のやけど跡が無くなるように。
Pray for 湯たんぽ