徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

放射冷却に思う宇宙

放射冷却をご存じだろうか。北国も北国、オホーツク海側以北に住む人間であれば知らないことはない現象である。

どういう現象か。

放射冷却 ー晴れているのに気温が下がる?!ー

これを見ていただけるとよくわかる。つまりは最も寒くなる状態とはどういう状態かと。実は晴れて太陽出ていた方が寒いんですよと。そういうことである。

雲は大気の蓋になってくれる。良くも悪くもこもらせてくれる。だからすっきりはしないものの、もわもわもわーっと暖かくいられる。しかし晴れは容赦ない。晴れは空気をとどめない。

放射冷却のせいで、北国の冬の晴れた朝はめちゃくちゃ寒い。澄んだ空気は澄みすぎ研ぎすまされすぎて凶器と化す。昨日までの残留大気はどこに行ったのだろうと。昨日の営みの中で温まった空気はどこに行ったのだろうと。

どうやら宇宙に逃げ去ってしまっているらしい。宇宙。なんと浪漫のある話だろう。僕らの生活で暖められた空気が宇宙にまで届いているのだ。宇宙のよくわからない物質と厳寒温度の前では、きっと誤差にもならない熱だ。でも、確実に宇宙に僕らの生活の証は届いている。

光よりも、もしかしたら歩くよりもずっと遅いスピードで、濃度もこれ以上なく薄まりながら宇宙の果てに届いていくやもしれない地球の生活空気。遥か何千年前に生きた人たちの温度は、放射冷却と引き換えに宇宙に捧げた温度は、今宇宙のどのあたりを漂っているだろうか。火星位にはたどり着いただろうか。恐竜の温度は。アノマロカリスの、三葉虫の温度は。

宇宙のどことも知れない星の誰とも知れない宇宙人が、宇宙の温度を観測していたとして、その温度計が若干でもふれたなら、それは地球の空気かもしれない。

なんてことを思う。遥かなスケールで物事を考えて、目先の寒さに目をつぶる。

寒くない!寒くないんだから!