徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

小さいころおせちが好きじゃなかった

正月太りというのがあるらしい。正月にはおいしいものがたくさんあって、特に働きも動きもしないから、体のエネルギーの収支が崩れて太っちゃうよと。

僕はそれがいまいちよくわからなかった。正月においしいものがたくさんあるとは特に思えなかった。なにしろ、そこまでおせちが好きじゃなかった。

子供にはありがちなんじゃないか。縁起優先で決められているメニュー。ラグジュアリーな感じはひしひしと感じるも、どこか薄味。大人の味を地で行くおせち料理。傍らにはお雑煮、煮物。煮物ばっかり食べていた気がする。おせちに率先して箸は伸びなかった。

だから太りもしない。そもそも極端に太りやすい体質ではないらしいのだが、それでも太りはしなかった。

一人暮らしを始めても、なんやかんやで正月前後には実家に帰っていた。実家に帰ったらおせちと煮物とお雑煮が待っていた。大学生になってからというもの、おせちが好きになった。舌が大人になったのだろうか、どうなのだろう。日頃一人ではあまり年中行事をやらない。せいぜい恵方巻きを食べるくらいだ。食で季節感を感じることがない生活の中で、たまのおせちがおいしく感じたのだろう。正月太りもわからんでもないなぁと思いだした。

社会人1年目。いよいよ年末年始に完全に帰省出来ない毎日が始まる。こうなったら本当におせちが恋しい。

お雑煮は作れる。餅さえあればスーパーで材料調達してなんとでもなる。煮物だってなんとでもなろう。筑前煮の材料なんてそこらに転がっている。でも、でもおせちは別だ。作れやしない。かといって、買ったって一人で食べるのは切ない。

縁起物を食べないとどうなるのだろう。厄年の入り口に立った今、少しでも福と徳を蓄えた方がいいのだろうか。三が日が過ぎ、もう平常運転をしようとしている世の中である。おせちはもう乗り遅れた感が強い。せめてもの罪滅ぼしでおせちへの愛をしたためる。

食べたくないわけじゃない。太ってもいいから食べたいのだ。おせち。