徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

北海道新幹線開通の意義を考える

北海道に新幹線が通る。鉄道界隈はざわついているやらいないやら。

headlines.yahoo.co.jp

JR北海道の社長も埋まらない席を虱潰してもらうのに躍起になっているらしい。

 

今月26日に開業する北海道新幹線

東北新幹線を延線し、新青森の先に「奥津軽いまべつ駅」、津軽海峡を渡り、北海道に突入。「木古内駅」と「新函館北斗駅」が開通する。東京から新函館北斗まで4時間2分。2万円と少し。わあ!早い!お得!

 

道東に18年間住み、度々里帰りをしている現状だが、この新幹線の意義を考えたく思いですね。

 

どうやら世の中ではこんな問題がささやかれているらしい。

  • 東京ー函館間を四時間切れない遅さ
  • 一日10往復しか通っていない本数の少なさ
  • 新函館北斗駅から函館駅へのアクセスの悪さ(20キロ弱離れているらしい)
  • 飛行機と比べて抜群に安いわけでもない運賃

 鉄道業も商売であるからして、きっと勝算はあるのだろう。とりあえずネットの記事をざっと三分ぐらい検索→戻る→検索を繰り返したのだが、残念な事にさしてポジティブな情報は見受けられなかった。

 

まず、誰を乗っけて北海道まで新幹線を動かしたいのか。そこにこの新幹線の意義が詰まっていると思う。

一道民の意見として、これまでの北海道ー東京生活のなかで、極端に交通の便が悪いと感じたことはあまりない。感覚がマヒしている面もあるかもしれないが。

羽田まで出れば2時間もしないで最寄りの空港に着く。早割を使えばお金も片道で15000円くらいだ。空港が近くにない道民は大変だろうが、幸い我が家は空港まで車で40分の好立地のため、本当に極端な不便は感じない。(なんの冗談でもなく北海道の共通意識からしたら好立地なのである。)

今回開通した函館だが、函館の空港に降りる方が道東のハブ空港女満別に降りるよりもよほど近いし安い。で、あればだ、東京ー函館間の交通に関して新幹線の優位性はほぼないと言ってもいいだろう。


この北海道新幹線

ひとえに東北ー道南の交通の便を良くするためのものになるに違いない。

現在、北海道から東北に行く場合、フェリーが主な手段となる。苫小牧港から大湊につくフェリーがでている。

これまた不便なのだ。空港はそこら中にある癖して本州とつながる港は苫小牧しかないと言っていい。どうしようもない不便もあって、僕は東北に行った事がない。フェリーにも乗った事がない。

新幹線が開通し、函館ないしは遠い将来だろうが札幌まで新幹線が通った場合、東北ー北海道の交通に革命が起きる事となると思う。

互いの主要都市である仙台ー札幌がどの程度でつながるかはわからないが、飛行機にしては近すぎる距離の移動手段として需要が見込めるはずだ。


しかし先ほども書いた通り、道民の大半が心より辟易しているのは本州とのアクセスよりも道内のアクセスなのである。空港から自宅への距離が離れれば離れるほど、里帰りが面倒になり、疎遠になる。

確かに北海道には空港が多いが、新千歳空港が独走している以外は貧弱な空港だらけだ。女満別も、1日に新千歳に数便と羽田に数便しか繋がっていない。


人口比率で言っても、東北全体の北海道需要と北海道全体(主に道南)の東北需要を足したところで、東京・大阪からの北海道需要の方が圧倒的に高いに違いない。調べてはいないが恐らくはそうだ。


何が言いたいかって、本州と北海道を繋げる前に北海道内の循環をもっとよくして欲しいよねという事だ。人口の面からしても、私見としても。

特に道東なんて誰もが知る北海道からはあまりに離れすぎている。きっと流氷需要やハスカップ需要があるだろうに、距離と交通に阻まれてしまっている。


地元の友人にも弘前だったり岩手だったりの大学に進学した人はいる。彼ら彼女らにとれば願ったり叶ったりの話になってくるのかもしれない。

しかし現状道内交通の司令塔である札幌にも通じていない。函館ー道内間のアクセスもしょぼくれている状況だ。大した恵みはない。

そりゃあ席も埋まらないよなぁ。然るべき状況だろう。こればっかりはいくら宣伝したって物珍しさだけでどうかなる事じゃない。何しろ遠いのだから。


この間石川出身の後輩が、北陸新幹線ガラガラでしたよ!ってニコニコ話してくれた。北陸の観光資源と北海道の観光資源、各々の距離を踏まえて考えても、大差ないどころか北海道は飛行機の諦めがつく分北陸の方がよほど新幹線需要がある。そんな北陸新幹線でさえガラガラのニコニコである。況んや北海道をや。


2030年代に札幌まで新幹線が開通するようだ。北海道新幹線の本領が判るのはその頃かなぁと思うが、その頃に北海道の観光・経済がどうなっているやら見通しは怪しい。大々的にオープンできるほどの話題性と活気があるだろうか。

道内の交通の便を!と言える道内でずっとあらねばならない。空港も減らされて行っている今、道内交通の便を主張できる根拠すらもなくなりつつある。


地方が元気でなければ交通の恵みは与えられないし、与えられないから元気が出ない。

ぐるぐる回る悩ましさを、北海道新幹線開通から考えさせられた。実家から400キロ離れた場所にちょろっと繋がった新幹線だが、同じ北海道なのだなぁと、改めて感じる事にもなった。