味音痴です。わたくし。
好き嫌いがないのは非常に人生においてプラスなのだが、なんでもおいしく食べられてしまうが故、どれも甲乙つけがたい味となり、舌がうまく育ってくれなかったらしい。目を瞑って食べた食べ物を、ズバリ当てるゲームで受験戦争を行う世の中だったら、確実に落第生だったろう。何しろハイチュウの味当てすらもおぼつかないのだ。
だからというか、なんというか、「コク」というものを今までよくわからないでいた。甘い、しょっぱい、辛い、苦いはわかる。出汁のうま味もわかる。しかしコクとは。
クレアおばさんのクリームシチュー
コクの秘密はブイヨン!
コクってどんなですか。ブイヨンもわからんがコクもわからん。
こくまろカレー。
だからコクってなんなんですか。まろはいいからコクを教えて。
先日、近所のスーパーでいつも買う牛乳が売り切れており、ワンランク高い牛乳を買うかどうするか逡巡したあげく、同価格帯の豆乳を購入した。毎朝グラノーラ(今はオートミール的なそれ)を食べているため、ミルクの類は欠かせないのである。思えば実家にいた時から牛乳は必ず飲んでいた。20年以上に及ぶ習慣だ。牛乳に支配された人生である。
ただ、豆乳を買ったのは初めてだったように思う。コーヒーの味が付いている商品とかは度々買ってはいるものの、純粋な豆乳は初体験だった。どう転んだってミルクはミルクだ。そうそう変わらんだろうと。
ある朝豆乳でグラノーラを食べたわけだが、もう感想はただ一つだった。
コクがないです。
コクがないとしか言えなかった。これまでコクがわからなかった僕が、一口含んだだけでコクの存在を確かに感じた。
何しろ圧倒的に物足りないのだ。牛乳のあの独特の風味というか、重みというか、ずしぃっとした側面が豆乳には全くない。さらさらである。むしろ、豆乳を飲むことによって、牛乳の特徴を再確認した。牛乳が苦手という人は、きっとあの臭みにも似たコクが苦手なのだろう。確かにそれは、牛乳にあって豆乳にないものだった。
どうやらある意味での井の中の蛙になっていたみたいだ。食事に対して保守的過ぎたのかもしれない。あまり買わない食材を積極的に買うことで、普段の食材がどれだけ自分にあっているのか再確認できると共に、より合う食材と巡り合えるかもしれない。
大切なことを豆乳が教えてくれた。
マメイジングな体験だった。