徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

不意に他人と目が合ったとき

通勤の電車の中で。街角で。お店の中で。何故だかわからないけれど不意に目が合うことがある。特に向かい合って座っている電車内でのコンタクトが多い。とにかく、何処の何某かもわからないお互いの目が不意に合う。

会釈をするわけにも行かない。最近は道案内をしようとしただけで不審者事案になったりするという。世知辛い。目が合って会釈したら不審者という流れも全く不自然ではないだろう。かといって見つめ合う訳にもいかない。じーっと見つめ合うなんて、世知辛い世の中になる前ですら事案になるだろう。

だから、暗黙のタイミングで目をそらすのだ。おそらく、お互いに。

比較的僕は早めに目線を切るタイプだと思う。目が合ったらすかさず他の場所に目線を移す。車内なら広告とか。さも、「広告見ようとしてたんだー」って顔して、広告を注視する。試しに普段よりほんの少し長く目を合わせてみると、案外皆様目を逸らさない。何を思ってこっちを見つめるのか。それも別に目尻も下がっておらず、無表情な顔のまま。僕もきっと似たような顔をしているはずで、お互いに幸せを分け合うわけでも、不幸をなすりつけるわけでもない。

 

パラレルワールドが本当にあったとして、ずーっと見つめあった世界に何が起こるのか、ものすごく気になる。ミュージシャンのPVやMVでよくある、目が合う→カメラが2人を中心にくるくる回る→恋に落ちる みたいな展開が待ち受けていやしないか。でも目が合うのは割となんでもないおじさんとかのが多いのは何故だ。恋には落ちやしない。むしろ落ちたくない。土俵際で粘り続けたい。

 

人々がスマホに目を落としだす前、雑誌や小説を見つめていたころ、きっと見ず知らずのアイコンタクトはもう少し頻繁に行われていたことだろう。それが他人の許容の土壌を生み、ささくれ立ちにくい世界を構築していたなんて考えることはできやしないだろうか。少なくとも、当時は道案内で不審者になる世界ではなかったはずだ。

人馴れしていない僕達は、使い勝手の悪いシャイを拗らせている。目も合わせられないのだ。目も当てられない。