徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

ポケモンGOに対する所感を徒然

大流行である。本当に、ビビっちゃうくらいの流行だ。

会社帰り、スマホを覗き込みながら歩く彼や彼女の画面を横目で盗み見ると、10人のうち5人はポケモントレーナーである。今まではスマホを持ちながら道案内をしている時にしかしなかったであろう、街角で2人、スマホを見ながら画面越しに会話をするなんていう光景がそこらで見られる。リリースから丸一日ちょっとでこんなにも世の中の風景を変えるポケモンGO。僕はまだダウンロードしていない。

果たしてポケモンGOは広く普及していくのだろうか。国民全員が一瞬「ワイルドだろぉ?」と口を揃えて言いだしたかのような、美しい大花火を一発あげて終わるのだろうか。

 

これまで、ゲームは日本に社会現象をもたらしてきた。マリオやドラクエの発売日には街に人が消えたなんて話を聞いたり聞かなかったり。家庭用ゲームはもちろん、たまごっちやデジモンなど、公園に出かけて友達とバトルしたり、歩いてモンスターを育てたりという携帯ゲームも日本の風景を変えてきた。

それらのはるかな延長線上にポケモンGOがある。

家庭用のゲームにおいて、ドラクエのようにナンバリングタイトルがあることは通念のように思う。1が発売され、人気になり、2の制作が決まる。以下エンドレスにシリーズ化されていく。そのため僕たちユーザーは、一つの完結された枠組みの中で競い、新しい枠組みを楽しみに待ち、新シリーズを購入するという方法で新たな枠組みに飛び込んでいく。前作のプレイ時間や、育てたキャラクターは次作には反映されず、新規に育て、遊ぶ。いたって当たり前のゲームの楽しみ方である。

しかしスマホゲームは違う。スマホゲームはアップデートが随時可能だからだ。ユーザーの声を聞いて、少し調整を加えるようなちょっとしたメンテナンスから、ゲームバランスを大きく変えるような大規模アップデートまで、自由自在にゲームを進化させていける。そのため、スマホゲームには1とか2とかというナンバリングの通念がない。人気が出た仕組みをひたすらに引き継いで、アップデートを繰り返すことで半永久的に新しいサービスを届けることができるのである。

私事極まりないが、パズドラをインストールしてからすでに4年が経過しようとしている。飽きも凝りもせずにせっせかとパズルを回して4年。飽きた人や辞めた人を横目に、長々細々遊んでいる。大爆発ヒットをぶっ放したパズドラであるが、パズルという能動の要素を、当時流行っていたドリランドのようなブラウザゲームに組み合わせてアプリを作るという仕組みに皆が食いついたのがヒットの秘訣だったろう。しかしパズドラが家庭用のゲームだったらこうまで爆発はしなかったに違いない。ここまでユーザーを噛みつかせ続けられるのは、パズドラがスマホゲームであるから他ならないのだ。新キャラの追加、新システムの追加、数多くのアップデートを繰り返して、パズドラは何度も新しくなった。根幹の仕組みの部分だけを残して、プラスαを積み上げつづけることで、新規ユーザーを獲得すると共に古株ユーザーにも飽きさせないゲームであり続けている。

加えて、パズドラが「パズル×ブラウザゲーム」という新しい掛け合わせを仕掛けたように、ポケモンGOも「ポケモン×拡張現実×街歩き」という明後日の方向から素材をかき集めたかのような掛け合わせをユーザー達に仕掛けていている。「ポケモン」の時点でほぼ勝ち馬なのだが、これでもかと新しい要素のブレンドを提案してきている。「携帯電話×カメラ」が代表的ではあるが、生活に爆発的な変化をもたらすのは既存の技術の掛け合わせである。ヒットと変化の必要条件と言ってもいい。

スマホゲームである点と、新しい要素を組み合わせて従来とは全く異なるゲームの仕組みを生み出した点から考えても、きっとこのブームの火はそう簡単には消えないだろう。これから何度も何度もアップデートを繰り返して、歓迎されたり文句言われたりしながら、世の中の一風景として溶け込んでいくに違いない。きっと間もなくリリースされるはずの、数々の後発類似ゲームと共に。

 

一田舎出身の身としては、ポケモンGOを何とか地方に還元してもらえないものかとどうしても考えてしまう。ポケモンGOが馴染み、700体超いるポケモンたちが巷をのさばる未来に、一体だけでも、地元でしか手に入らないポケモンがいてくれたら。オホーツクだったら氷系の強いポケモンがいても全くおかしくないだろうとは思うのだが、あまりにもスケールがでかくて適しないのだろうなとも思う。なんやかんや賑やかなところで、ごみごみわちゃわちゃとポケモンを集めるためのゲームだ。ポケモンGOは。しかしまぁ、一度こういう人を動かす仕組みができてしまえば、人間を大移動させることは容易い。ガンホーがパズドラレーダーを用いて地方のフェスに人を呼んだように。日本各地で土地柄に合わせたポケモンGOにまつわるイベントを開催したなら、相応の動きがあるだろう。下手したら、高々スマホゲーム、高々企業の采配ひとつが、地方創生の生き死ににかかわってくるのである。恐ろしい話だ。地方同士がポケモン誘致合戦を繰り広げた末、地方と企業の癒着が発覚なんてことも無くはない。そのうちポケモンGOがメディアとして認められ、ポケモンGOのマップ上に数々の広告が掲載されたりするなんてことも起こらないとは限らない。

 

既に日本ないし世界の風景を変えたポケモンGO。舵取り次第ではいくらでも世の中を変えるポテンシャルがある。我々はポケモンGOの上の鯉で、ポケモンGOが振りかざす様々な仕掛けに踊らされる身だ。しかし、ポケモンの中のコイはレベル20になると龍に進化する。ただのコイではない。我々の中から次の仕組みを編み出す人間がきっと出てくる。それもまた楽しみだったりする。何かが間違って自分の下に仕組みを整えるだけの材料が転がり込んでこないかとワクワクもしたりする。