徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

口内炎 〜co-night end〜

口内炎になった。一昨日のことである。右の頬の裏側に出来たそれはチクチク内側から刺激し、好きな子が出来たかってくらい、僕はそわそわする。

ほっぺの裏側を噛んでみる。クレーターのようになったそれが上下の歯に押しつぶされ、でっぱる。同時に、さらなる痒みと痛みが僕を襲う。強く噛んでは緩め、吸ってみて、舌でコロコロしてみては、また噛む。仕事が忙しく、しばらく忘れていても、ふと緊張が緩んだ際にはまたしても奥歯に当たる口内炎の存在が気になって仕方なくなる。

食事中、たまに本気で噛む。激痛が走る。会話が止まる。咀嚼が止まる。思考が痛みに支配される。小指を何処かの角にぶつけた時の悶絶に近い。唯一違うのは、小指は立て続けにぶつけることは少ないが、口内炎は勢いよく噛むと余計に腫れ、より噛みやすい存在になる点である。まるでアゴを叩けば叩くほどアゴが出てくるボクサーのようなもので、急所の主張は急所への一撃のごとに強くなるのだ。一度発生した口内炎は暫くの間自らのウィークポイントであり続ける。一歩進んで五歩下がりながら、治療への一途を辿るのである。


栄養バランスの崩れや疲れを起因とする口内炎。ビタミン剤や栄養剤は予防にこそ適しているかもしれないが、ここまで肥大化し、ラスボスかのような存在感を湛えた口内炎には、ビタミン剤など一縷の反抗もできやしないだろう。僕ら人間サイドができることなど、せいぜい、噛まないように細々とした気配りをする程度である。圧倒的無力。一向一揆をされた地主の気持ちがわかるってもんだ。


つらつらと筆が進む時というのは、大抵肉体や精神はピンチに陥っている。不平不満こそが執筆のエネルギーであり、痛みと哀しみこそが表現のモーターなのだ。

つまり何が言いたいか。痛くなった果ての口内炎の治し方を教えてください。それだけです。