徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

朝のロードショー・バタフライエフェクト 〜あらすじと感想〜

これほどまでに充実した朝の時間があろうか。

最近寒い。朝走るなんて健康保持運動をする気がサラサラ起きない中で、なんでもない朝時間をどうにか充実させようともがいたところ、僕は映画を観ていた。

職業柄、割とフレキシブルな労働時間である。出勤時間が少し遅い日、朝が早い日と全く同じ時間に起床し、猛烈な勢いで支度、いつでも出られる状態を作ってから、2時間没頭するのである。間違ってもアラビアのロレンスなんて観られない。

今日はこれを観た。



作品レビューを見ている中で、なかなかに評判がいい作品であった。TSUTAYAでも貸し出されがちだったのだが、不意に見つけたのでモーニングロードショーの記念すべき1回目を飾った。


内容はこんな感じだ。


主人公のエヴァンは幼い頃から度々記憶を失うことがあった。母のススメで彼は日記を書くようになる。毎日日記を書き、記憶を失った日もわかる範囲で書き留めるようにしていた。

大学生になったエヴァンは、心理学それも記憶の研究で優秀な成績を残していた。相変わらず日記を書きながら。不意に日記を読み返したところ、記憶が途切れた場面が自分の人生にとって重要な場面なのではないかと考えるようになる。途切れた記憶の中で何が行われ、今の自分の人生に結びついているのか。エヴァンは幼馴染を訪ねて、本当の記憶を洗い出そうとする。幼馴染にズケズケと過去の出来事について聞いて回るが、ものの見事に幼馴染たちの心の傷に触れまくり、トラウマをほじくり出し、ついには幼馴染の1人で、幼心に恋心を寄せていたケイリーを自死に至らしめてしまう。

後悔するエヴァン。こんな人生になるはずじゃない。俺も、ケイリーも。何が悪かったのか。日記を読み返し、読み返し、過去の記憶喪失の日のページにたどり着いたエヴァン。精読すると文字が揺れ、景色が揺れ、気がつくと当時の自分の中に入り込んでいた。

さぁエヴァン!過去を変えるチャンスをもらったぞ!素敵な未来へ向けて突っ走れ!誰も死なせるな!


と、まぁ、こういう話なのだが。


タイムスリップ過去改変物語。とってもサスペンスであり、最後にエヴァンが選びとった未来は切ないものだった。タイムスリップできる力を持った時、人はどうしても過去に依存してしまうのだろう。より良い今を探して。自分と周囲の人皆が幸せな未来を望んだエヴァンだったが、結局のところ、そんな未来はどう分岐させても不可能だった。

恐らくはこの世の誰も過去に向かうことはできないし、角度を1°だって過去を変えることはできない。全くやり直しの効かない世界で生きている。たまたまやり直しができたエヴァンだったが、彼の姿から逆説的に「今、現在」の重要性を学んだ。

たくさんのもしもが転がり、後悔に埋め尽くされた世界である。自分だけでも山ほどの後悔がある。たらればだらけである。まして自分に関係のある人、ない人、あらゆるもしもとたらればを掛け合わせると、星の数ほどのもしもの世界が生まれる。自分のもしもは叶わない。誰かのもしもも叶わない。代わりに、すべての可能性を断ち切った今がある。犠牲と幸福、しわ寄せと名声を、各々が享受している今がある。とにかく今なのだ。今以外は存在しない。未来もない。過去もない。今だ。生半可なたらればへの希望を断ち切られているから、今を頑張れるし、頑張らなきゃいけない。


そう思って、頑張って時間見つけて文章を書いている。次は何を観ようか。