徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

三島由紀夫とであった

本屋の息子に産まれたくせに申し訳ない程度の読書しかしてこなかった。世の中の読書かの方々であればもっとこの境遇を生かして博識高い人間になれていたのだろうが、僕は出来なかった。山のような本に囲まれながら必死にゲームをしていた。本に手を伸ばしたと思えば攻略本だった。

大学生になって実家を離れてもたいして本は読まなかった…というか、読書量は増えることはなく読んだり読まなかったり、ぼんやりした読書体制を敷いていた。

そういうわけで、この間三島由紀夫と初めて出会った。潮騒を読んだ。


潮騒 (新潮文庫)

潮騒 (新潮文庫)


人里離れた離島での恋物語を耽美な筆致で描いた作品だという。言うが易し。読んでみて、文章の上手いことに驚いた。冗長な表現もほぼなく、必要な心情と情報を過不足なく伝える言葉たち。そして何よりエロい。どことなくなんとなくエロい。こういう恋がしたい。したかった。不器用が恋にほころぶ瞬間がこんなに美しいとは。美しく描くとは。なんでしょう、感服だった。

逆説的にこれまでの読書に乏しい日々を嘆いた。恵まれた環境にいながらなんという体たらく。A5ランクの牛肉しか取れない牧場主の息子が牛肉嫌いだった…みたいな話である。万死に値する。

僕はこれから読書をしようと心に決めた。名作、名作家に浸ってみようと思った。悲しいかな、近所の図書館の品揃えはひどい。しかし、手に届く範囲でいい。娯楽として言葉の流れに身を任せてみようと思う。

どうしても、三島由紀夫の日本語は美しかった。