徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

もうダメかもしれない

洗濯機にゴミを捨てていた。ゴミ箱に洗濯物を入れた。

ゴミ箱に洗濯物を入れた段階で自分の行動の不可思議さに気づいた。なんで今ゴミ箱に靴下とシャツ入れたんだろうか…さっきまで両の手には紙くずと洗濯物。もしやと思い洗濯機の中を確認したらさもありなんといった顔で紙くずが出てきた。僕は心底自分に失望した。もう少し分別のついている人間だと思っていた。違った。

よく、メガネかけながらメガネ探したり、ハサミを手に持ちながらハサミを探したりみたいな笑い話を聞く。なんともベタな滑稽だ。でも、その渦中は甘くない。絶望的なほどの無力感に襲われる。今だってそうだ。洗濯機に間違ってゴミ捨ててたんだ!ゴミ箱に洗濯物入れてたんだ!こんな話をしたらありがちでインスタントな笑いを得られるかもしれない。しかしダメージの方が圧倒的に大きい。不確かすぎる。自分が不確かすぎる。確かに歩いていた足場が途端に崩れてしまうような恐怖。記してきた足跡が全て偽物になってしまうような不安。

叙述トリックの小説を読んだことがあるだろうか。

最近話題になったのだとイミテーションラブあたりが有名だ。ミスリードを読者にさせまくって最後の最後でどんでん返しを仕掛ける戦法。あれ、読んでいると種明かしの瞬間に自分の組み立ててきた頭の中の物語が総崩れする感覚に襲われるんだけれど、まさに今回のゴミ箱洗濯機錯誤事件にて同じ感覚を味わった。

これまでの仕事でも同じようなことをやってきたのではないか。バレていないだけで、途轍もないミスをしでかしているんじゃないか。洗濯機にマヨネーズを入れて、衣服をゴミ箱に捨てて、ゴミを冷蔵庫に入れてたりしてるんじゃないか。

疑心暗鬼が止まらない。もうダメかもしれない。