徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

4分遅れに苛立つ僕らに

嘘のように複雑な電車網が張り巡らされている東京では地上地下問わず恐ろしい数の到着と出発が絡み合っており、些細な不具合によって遅れが発生する。時間にしてわずか数分。その数分に対して苛ついて悪態を吐くサラリーマン。この光景は割とよく見る。サラリーマンを諭すようにして鉄道会社は謝罪を述べる。「現在混雑の影響により、この電車約4分ほど遅れて運転いたしております。お急ぎのところご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません。到着までいましばらくお待ちくださいませ。」

僕だってそうだ。4分にやきもきする時だってある。トイレに行きたいとか、待ち合わせに遅れるとか、諸々。そもそも遅れないはずの4分を当てにして都会に住む人々は時間を組み立てているところがあって、何があってもある程度大丈夫なようにさっきトイレ行っときゃよかったじゃん、早く家出ればよかったじゃん、みたいな話にはならない。出来すぎる鉄道網に依存しきってしまっている。いや、依存しているなぁとすらも思わない。水道が出るように、電気が流れているように、当たり前の一つとして電車が動いており、水の出が悪いとイライラするのと同レベルで電車の遅延を考えている。水道を比喩に出せる水道網も実は凄かったりするらしいから、何にしろ全部できすぎている。

4分に悪態を吐くサラリーマンにも、4分に平謝りする鉄道会社にも、どちらにも慣れた。相当にどうかしている気がする。こうしてぼんやりパソコンに向かっているわけだけれども、たまにYouTubeとか見て気づけば10分20分平気で経ってしまっている。4分なんて微々たる時間だ。なぜにあんなにイラつくのか。なぜにあんなに謝るのか。しかも原因は混雑だという。自爆である。ぎゅうぎゅう詰めのため息が猛烈な向かい風を電車にもたらしているのだ。

秋が転がって冬に着地すると雪で電車が止まる。それを見越して早く出る。鉄道会社はそれでも謝るだろう。雪害で遅れてすみません。気持ちだけ受け取って、労ってやりたい。なんなら日々の僕らも労ってやりたい。悪態吐くサラリーマンも。

何しろ全部出来すぎているのだ。