この10月15日あたりの吉日をもって、僕は昇進した。名もなき一兵卒から主任になった。たかが、主任。されど、主任。主に任されると書いて、主任。
主任になってみての感慨は割とない。
理由としては、同期が割と足並み揃えて昇進するためというのが1つ、あとは、家賃補助がなくなるため実質の減給処分であるということが1つ。主任なんてなってあたりまえじゃないのよ。そんな風潮が辺りを包む。
うそです。
そんなことはなかった。
自らが昇進したために、お金という、なんともわかりやすい概念で、同水準もしくは高水準になってしまった同僚がいる。先輩がいる。実質の減給処分なんて知ったこっちゃない。いい家住んでんだからその分金払ってんだろって言われたらその通りである。自ら進んで可処分所得を犠牲にしている。捧げるものは大きい。
これまで、笑顔でいくつものことをごまかしてきた。次から頑張ります!でたくさんのことをうやむやにしてきた。
しかしいよいよ、煙に巻く作戦が通じなくなりつつある。
いや、お前そんなこともわからんのかよ。そんなんでおんなじ給料もらってんのかよ片腹痛いわ。なんなら両腹痛いわ。アニサキスかと思うわ。
そんな声がそこはかとなく聞こえてくる。
そう、僕らはいよいよ実力で勝っていくしかなくなってくるのだ。広い視野、細かい気配りと指摘。その他大勢と比べて比肩する者なきレベルで万能戦士になることが求められる。
それが主任。主に任される者としての使命。
本当の力が白日の下に晒された。今こそが気合の入れどころである。感情の見せ所である。
歯を食いしばり、足を踏ん張り、頭を回し、復習を欠かさず、同じ轍につまづくことなく走る。
終電に乗りながら決意を固くするも、この電車は最寄りにはつかない。背水のタクシーを覚悟しながら、その分の給料を稼いでいく気持ち。