徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

台風接近時の錦糸町は健全そのものだった

錦糸町というのは何かと物騒な街である。特に南側、首都高までの歓楽街は競馬場とパチンコ屋と風俗店とラブホテルが軒を連ね、ダークサイドに堕ちた戸越銀座商店街のようだ。

駅から家までの10分間で、調子がいいと二桁回数の「お兄さん今日どうですか!」をいただく弊ホームタウンであるが、なんと今日は人っ子一人見当たらなかった。

そう、台風である。

本格的な雨嵐になる前の錦糸町。だが、日曜の夜ということで人出も少なかったのだろう。キャッチのお兄さんも、客引きのお姉さんもいない。空いているスクランブル交差点の如き違和感を感じながらの家路であった。

 

対して、横浜の地下街は違った。

職場まで地下街を通って向かうのであるが、避難勧告が出ている最中でも爛々と光が点り、いらっしゃいませの声がちらほらと聞こえてきた。その中を家路につく僕ら。電車あるかな?動いているかな?我が身可愛さに一生懸命ホームを目指すも、四方で営業されているお店。

あなた方は帰らなくていいのかい。避難勧告出ているよ。

 

この間ばあちゃんの葬儀で向かった千葉県佐倉市。ちょうど祭りの季節だった。

佐倉の祭りは大規模で、町会ごとに神輿が出て、エッサーエッサーと街を練り歩く。出店もたくさん。法被姿のおじさんおばさん、お兄さんお姉さん、子供たち。法被じゃなかったらちょっと場違いなくらいの雰囲気になる。

街道を運転しながら、叔母とこんな会話をした。

昔は町の米屋とか、町の八百屋とか、町の農家とか、そんな人たちばかりだったから祭りでみんな一斉に休んでハレの日を迎えられた。私が小さな頃はギリギリその名残があったけど、最近はサラリーマンや公務員が多くなってしまっているから一斉に休むわけにも行かなくなっちゃって寂しくなった。

 

多分、社会が発達したということなのだろう。

日本はどこに行っても均一なサービスが受けられる。受けられるようになった。いつどこに行ってもある程度のものは揃うしある程度生きていける。

素晴らしいことだが、反面、だんだんと融通が利かなくなっていく。

 

今日は祭りだからみんなで休むか!

が、出来なくなる。だから、

台風来てるから今日は早く仕事切り上げて帰ろう。

も、出来なくなる。

隣の店が営業しているし、何より地下街自体営業してしまっている以上、店じまいをすわけにいかないのである。

 

何が健全か、それを突かれるとなんとも窮するのだが、少なくとも台風接近中の今日を切り取ると、錦糸町はとっても人間味溢れる営業の仕方をしているように思えた。

どうせ今日なんて客こないよ。

というか、こんな日に遊ばないで早く帰れよ。

そんなぶっきらぼうな優しさすらも感じた。

窓の外はあいも変わらず、猛烈に雨粒の音がしている。横浜の地下のお姉さん方の無事の帰宅を願わんばかりである。