衆院選が終わってしばらく。
二週間足らずの喧騒が遥か昔のように思える。投票はしたものの、政党のツイッターをフォローすることもなく、ニュース番組を頻繁に見るわけでもなく、新聞を熱心に読むわけでもない、ありがちな若者有権者然とさせていただいた。
ちゃちな知識でもって考える今回の選挙戦のハイライトは、
小池百合子氏による希望の党のセンセーショナルな立ち上げ⇨民進党が希望の党へ合流発表⇨小池百合子氏「排除」「さらさらない」⇨求心力低下⇨合流回避のための無所属候補が増加⇨枝野氏立憲民主党を旗揚げ⇨立憲民主大躍進・希望の党ドベドベ
というどんでん返しであろう。のそのそと動いているように感じられがちな国政関係の出来事が刻一刻と状況変化していく様は見ていて面白かった。
何しろ、時勢が大きく変わったのが、「排除」発言だ。この言葉が光の速さで各家庭にお届けされたところから、明らかに風向きが変わった。誰もが知るところである。
あの発言。
お話の流れからいうと、売り言葉に買い言葉のような側面が多分にあるんじゃないか。
「みんな明日も来てくれるかな!?」
「いいとも!」
と同様に、
「異なる理念の候補者を排除するのかな!?」
「排除します!」
と答えてしまった。そんな感じがする。
例え勢いで反射的に答えてしまったのだとしても、思慮に欠ける発言であることには変わりないし、言葉を選ばずにいうと、その程度のふっかけに乗ってしまうようでは甘い。
ただ、勢いで答えた側面があると考えると、今確立されている冷徹非道な女性宰相というレッテルは果たして真実なのかどうか、考える余地があるのではないか。
僕自身、とかく言葉遣いに気を使う職業に就いている。
敬語の類は本当に難しく、雄弁すぎると確実にボロが出てくるので、最近仕事の最重要場面では沈黙は金スタイルを貫いている。
反射的に出てくる言葉にロクな言葉はない。「はぁぁぁぁぁ」とか「すぃぃぃぃ*1」などの吐息で間を持たせてから、文章を捻り出す。
反射的に出てくる言葉にロクな言葉はないと知ったということは、反射的に出てくる言葉で数々の失敗を犯した証左で、また、未だに失敗を繰り返す。
自らに尊敬語を使うなんていう凡ミス。
謝罪時に「えぇ、はい、おっしゃる通りでございます。はい。」と肯定ラッシュの流れから、「そういう私も悪かった」旨のお言葉をお相手よりいただいた瞬間、反射的に「左様でございますね…」と返すミス。
なぜか途中の言葉がタメ口になってしまうミス。
数をあげればキリがない。
しかし、これらの失礼極まりないことを、僕は全く考えてはいないのである。
自分がご飯を「召し上がる」ようなメンタリティはとてもじゃないけど持ち合わせていないし、謝っている最中は胃がねじ切れそうな思いをしている。先輩上司お客様にタメ口なんて乱暴な言葉を使う気なんてさらさらない。
でも、気づいたら失言の泥沼に突っ込んでいってしまっている。
これはひとえに、気持ちを言葉にする力が足りていないのだ。訓練不足。力量不足。
たくさんの言葉の引き出しを持ち、相手の言葉に対して適切な引き出しを素早く開けることのできる力を鍛えまくれば、気持ちは確実に相手に伝わる。
相手の言葉を読み間違えたり、集中力を切らして違う引き出しを開けてしまったりすると、途端に失言のバースデイ。平謝りでは済まされなくなってしまう場合だってある。今回の「排除」発言しかり。
小池氏ほど舌鋒鋭く政界でやって来たお方が、今、ああいった発言をされるってことは、十全に自らの気持ちを表しての結果なのかもしれない。日本で有数の言葉の引き出し開け師なのでしょうから。
しかし一方、罪のない口の滑りだった可能性だってなくはない。
心にも思っていない排除という言葉が、「殲滅作戦*2」という記者の強い言葉に釣られて飛び出した。ただそれだけだったのかもしれない。
そんなことを考えて、小池氏の人柄を見定めながら盛衰を眺めてはいたのだけれど、パリでのお話とかを聞いているとなかなか汚名返上は厳しそうな趨勢ですね。
やはり本当に冷徹非道な女性宰相だったのでしょうかね。