徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

北見市のスーツ屋さんのDMが東京の自宅に届くことについて

某大手スーツ屋さんのDMが、セールの度に我が家に届く。多分、帰省の折に喪服を買った為であると思う。

「お買い上げ金額上位何名までDMを送付する」

という絞り込み方をしているのだろう。すごく気持ちはわかる。

 

だが果たして、このDMに意味はあるのだろうか。

広告にはほとほと疎いのだが、市井の人間として感じる。

 

 

店舗を持つ業態の小売店には必ず商圏が存在する。

主要顧客の居住地が商圏。おおよそ円状、ないしは、電車の沿線や幹線道路に沿って商圏は広がっている。都会のコンビニだと周囲100m程度の狭さだろうし、北海道のイオンだと周囲100kmにまで及ぶこともあるだろう。

インバウンドをはじめとした旅行客が落としていくお金も大きいが、店舗を持つ小売店においては、売り上げのほとんどが商圏内の顧客によって構成されている。

 

商圏を念頭に置いて売り上げを伸ばそうしたとき、ふた通りの考え方ができる。

  • 商圏内での売上を上げていく
  • 商圏を広げていく

顧客一人の購買額を増やしていくか、顧客自体を増やしていくか

とかく、商圏を広げるというのは難しい。新しい道路ができたとか、路線の乗り入れが始まって交通の便が良くなったとか、再開発でテコ入れして地域自体がスター状態に突入したとか、行政やディベロッパーの力を借りないことには商圏はおいそれと広がらない。

 

だから、商圏内での売上を上げていく方向に皆舵を取りがち。

僕だったらそうするし、多分みんなそうする。

 

商圏内でも、ふた通り、売上を上げる方法があることは想像がつく。

  • 既存顧客の売上を上げていく
  • 新規顧客を開拓する

先の二択とほぼ同じ二択である。

 

そうした中、販促策として今回のDMの機能はどう考えられるか。

誰に何を知らせてどうしたいのか。

「既存の顧客(お買い上げ実績のある顧客)にセールやイベントを知ってもらって、再来店を促す」

多分こんなところだろう。勝手にこんなところとする。

 

まず

「既存の顧客」の絞り込み方。

これがDMの成否を握っている。

 

上にも書いたが恐らく、地元の某スーツ店は顧客の絞り込み方として

「お買い上げ金額上位何名までDMを送付する」

という方法を用いている。想像の範囲だけど。

「ここ1〜2年でたくさん買ってくれた人はきっともう一回買ってくれる可能性が高いはず。だから上からローラーかけてしまえ!」

この考え方は至極正しいと思う。変に奇を衒うよりは、購買実績とこれからの購買行動を比例させて考える方がいい。感覚的に納得がいく。

 

その為、たまたま昨冬のっぴきならない事情で喪服を買って多分ポイントカードかなんかを作った僕の元にDMが届いている

 

しかし、「既存の顧客」に「何を」伝えて「どうしたい」のか。

「何を」と「どうしたい」が変わると、「既存の顧客」の絞り込み方も変わってくる。

 

今回はセールのDMだった。

だから、「セールがあること」を伝えて、「来店して欲しい(買い物して欲しい)」のである。

ではそれが「お買い上げ金額上位何名」で括れるのかという話だ。

 

スーツ屋さんのDMが届いて、店舗に行くまでの顧客心理は以下だろう。

  • 「最近スーツが欲しい+DM宅着『セールやるよ!』=渡りに船!買い物行こう!」
  • 「DM宅着『セールやるよ!』+あ、そういえば最近スーツ足りない感じだった=買い物行こう!」

DMを送ったことで、購買意欲をくすぐるか、購買の後押しをする。

あったりまえだが、「買い物行こう!」に結実しないことにはDM送る意味はない。



僕は今東京に住んでいる。

おもっくそ商圏外である。

おわかりいただけるだろうが、「セールやるよ!」と北見のスーツ屋さんに言われても、「買い物行こう!」とはならないのである。「あぁそう…」と静かにDMを机に置くくらいしかできない。

買い物に結実しないDMはすなわち経費の浪費である。

既存顧客の絞り込み方の中で、「北見市近郊のお買い上げ金額上位何名までDMを送付する」という絞り方はできなものなのだろうか。

どう考えてもセールの度にやってくる北見のスーツ屋さんのDMは僕の購買行動に結びつくとは思えないし、僕にDM送るんだったら北見のどなたかにでもDM送ってやって欲しい。

 

 

今や、アマゾンやFacebookに数多の個人情報を握られてしまっている僕ら。趣味好みの類が丸裸にされ、ドンズバの広告がパソコン上に表示されてくる。

DMのように顧客を購買実績で括る手法や、特定の地域にチラシをばらまく方法は半ば時代遅れになって来ているのかもしれない。

チラシが机の上に置いてあって、なんとなく家族の目に留まる。そんな風景はもう多く存在しない。単身世帯や核家族世帯が増え、自分の興味があるもの以外は全部ゴミ箱or無視の世知辛い世の中だ。

世の中の変化と、手段の多様化。

DMやチラシに絶大な威力が残っている地域もまだまだたくさんある(北見でいうところの経済の伝書鳩というキラー媒体)。

使い方一つ、使い分け一つだろう。

まだまだ効果的なお知らせができるはずだ。

 

以上、朝の頭の運動終わり。

考えさせてくれたDMは大切に机の上に置いてあります。