ゆとり世代の僕らが過ごした思春期を紐解いた時、彼女たちの楽曲は必ずどこかで鳴っている。
初めて「チャットモンチー」の名前を聞いた瞬間を僕ははっきり覚えている。
中学二年生、学校、階段の踊り場。どこの世にも中学生くらいで夜更かしを覚えるやつが出てくる。そんなマセた友人が、前日のカウントダウンTVの話をしてくれた。
チャットモンチーのシャングリラがいい。
僕はその時点でチャットモンチーを知らなかった。「チャットモンキー」と誤認して、家に帰り、覚え始めたパソコンでPVを探した。youtubeが普及していない中、どう考えても違法にアップされている文字化けだらけのサイトでチャットモンチーを初めて聴いた。
チャットモンキーじゃないじゃん…モンチーじゃん…
聞き間違えの恥ずかしさを抱えながら聴いたシャングリラ。ORANGE RANGEとBUMP OF CHICKENが全てだった僕には音楽を測る定規がなかった。それなりに、ただそれなりに、曲を聴いていた。
なんとなくマイナーなコードで進むシャングリラは、強烈な名曲だと思わなかった。
ただ、ボーカルの声が可愛かった。
高校に入って、バンドをやるようになった。お遊びと言われてしかるべき、ちゃっちいバンドだった。
けど、ボーカルの子がチャットモンチーが好きだったので、シャングリラをコピーした。どうせならしっかり聴こうと思い。アルバム「生命力」を借りた。
- アーティスト: チャットモンチー
- 出版社/メーカー: キューンレコード
- 発売日: 2007/10/24
- メディア: CD
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今でも聴いている。名盤である。
スリーピースバンドで、無理せず鳴らせる音のみで構成された楽曲群。余計な音がないから、メロの良さとか特徴的な声、演奏が際立つ。
定期テストで上から何番に入ったら買ってやるって言われて、必死こいて勉強して買ってもらったエレキギターでシャングリラを弾いた。びっくりするくらいにシンプルなギターソロに涙流すほど苦労した。懐かしい思い出。
文化祭では「ヒラヒラヒラク秘密ノ扉」を友達が演っているのを聴いて、やっぱいい曲だってアルバム「告白」を買った。
- アーティスト: チャットモンチー
- 出版社/メーカー: KRE(SME)(M)
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これには「風吹けば恋」も入っている。
風吹けば恋は良い。もう、良い。
Aメロの絶妙な不安定さからサビへの開放感。サビのキャッチーなことキャッチーなこと。
だけどもうだめみたいだ なんだか近頃おかしいんだ
だけどもうだめみたいだ なんだか近頃おかしいんだ
走り出した足が止まらない 行け!行け!あの人のところまで
思春期のグズグズした葛藤や鬱屈した思いがぜーんぶ解き放たれるようなサビへの展開。大好き。ほんと好き。
最初のドラム入っただけで愛しさと切なさと心強さがないまぜになった途轍もない感情に襲われる。こんな感情ををエモいと呼び出した奴は天才だと思うし、もれなくエモい。
なんとなくMVの絵面に時代を感じる。今や10年前の曲。十年一昔。あゝ無情。
「生命力」と「告白」を無限回リピートしていた頃、後輩が無類のチャットモンチー人間だったことが発覚し、彼から「表情」を借りた。
「湯気」である。湯気の湯気による湯気のためのアルバム。
歌詞が先にできてたんだなぁ、あとからメロに突っ込んだんだなぁって、ありありと作成環境が目に浮かぶメロと歌詞。
歌詞だけ読んだら文学でしかないのに、普通にロックチューンに乗っけちゃうもんだから
ちんぷんかんぷんの数学
なんていう歌詞で謎のキメが入ったりする。
でも、全部含めて良い。
思春期に思春期としてチャットモンチーをたくさん取り入れ、思春期を過ぎた後はタイムマシンとしてよく聴いた。くみこんの脱退、ツーピースバンド、恒さん等の加入。ロキノンを読みながら、脇目でチャットモンチーを眺めていたが、あの頃のように夢中になって聴くことはなかった。
都合よくチャットモンチーを消費して、解散に触れて都合よく悲しい気持ちになる都合のいい人間だ。
こうして書いている間も、iTunesで生命力を流している。
雪の中の通学路や真夏のグラウンドが簡単にフィードバックしてくる。曲の内容よりも、景色が浮かぶ。気持ちが浮かぶ。良い気分である。
ゆとり世代の僕らが過ごした思春期を紐解いた時、彼女たちの楽曲は必ずどこかで鳴っている。
大変、お世話になりました。ありがとうございました。