BiSHが売れている
昨日はスッキリ!!出演。明日はMステ。
情報過多。
怒涛の販促宣伝。売れるというのはこういうことなのですね。
情報咀嚼能力がそう逞しくない人間としては、やっとやっと新アルバムを聴いている段階である。いっぱいいっぱいです。
アルバム発売
昨日、新アルバム「GUERRiLLA BiSH」が発売された。
タワレコ限定のゲリラ販売があったものの、正式な発売は昨日。しかし一昨日、僕はフラゲを決め込んだ。
CDをフラゲするなんていつぶりだろうか。
レジに並びながら、中学生の頃、フラゲしたCDを発売日の校内放送で流していたことを思い出していた。潰れる寸前のニキビのような、限界極まっている感性に突き動かされていた当時。10年経った今でも同じようなことをしている。
電車に揺られながら懸命に新譜のセロファンを剥がす。聴けないから、とりあえず歌詞カードを眺める。すごく生暖かくて懐かしい気持ちであった。
いいとして。
ざっと聴いたところを書き残しておきたい。
13曲入っている。
1.My landscape
2.SHARR
3.GiANT KiLLERS
4.SMACK baby SMACK
5.spare of despair
6.プロミスザスター
7.JAM
8.Here's looking at you, kid.
9.ろっくんろおるのかみさま
10.BODiES
11.ALLS
12.パール
13.FOR HiM
GiANT KiLLERS、プロミスザスターは先行でリリースされていて、My landscapeはリードトラックとしてMVが公開されている。
そういうわけで、完全新曲は10曲。耳馴染みの曲が3曲。
総じての感想
アイドルというコンテンツは、本当に色々な音楽と組み合わせられるものなのだなと、改めて思い知った。
「楽器を持たないパンクバンド」として活動している彼女たちだけれど、音楽の規模はパンクバンドのそれを確実に超えてきている。
最初は「アイドル×パンク」だったのが、「アイドル×エモ」や「アイドル×メロコア」、結局は「アイドル×ロック」という結構広いジャンルを包括する存在となりつつある。それは、人気が出てきている証左である。
メタモンのように、何にでも染まれる。どんな曲でも演っていける。
これがアイドルの、もとい、BiSHの良さとなっている。
そういうわけで、ワンジャンルに凝り固まったアルバムというよりは、色々な曲が聴けるアルバムとなっている。
胃もたれもせず、聴けるのではないでしょうか。
以下、それぞれの曲について。
1.My landscape
前も書いた。
スッキリ!でも披露した曲。
加藤浩次が、
「楽器を持たないパンクバンドって言うけど、パンクじゃないよね?これ?」
みたいな反応をしていた。そうです、もはやこれはパンクではありません。脱皮しようとした意欲作です。
アルバムの一曲目、アルバムの指針を決めると言ってもいい重要な一曲の始まりが、ストリングス。これまでのアルバムとの毛色の違いに驚きを禁じ得ない。
やっと歌詞を拝見したわけであるが、作詞者がJ×S×K。渡辺淳之介氏である。
敏腕プロデューサーでありながらエモい歌詞製造機である彼。オーケストラ、プロミスザスターと、有名どころの歌詞の多くは彼の手によるものである。
エモい歌詞はわかりやすさが前提となる。
オーケストラで言うところの
やがて訪れたよね さよならの声 忘れはしないよ
あんなにも近くにいたはずが 今では繋がりなんて あの空だけ
端的に別れの寂しさを表している。
豚骨ベースの家系ラーメンのようなわかりやすさがないと、エモったらしい歌詞にはなかなかならない。
そして、大衆受けする楽曲の多くに、エモい歌詞はつきものだ。
対してこのMy landscapeの歌詞はとても抽象的である。歌詞の中身よりは音に言葉を乗っけることを重要視したような歌詞。
だが、大抵の場合、そういう抽象の裏にこそ本音が隠れているものだ。
弱音と不安を抱えながらBiSHを動かしている胸中。
まだリスクリスク
負えない 全てを
発散できぬ 涙流れて
頬 伝う ほぼ いらない
またいつかいつか
そう言えば叶うか
ほとほと疲れたまる何かよ
大きくない ほぼ いらない
サビ前の歌詞にそれでもやっていかねばならない気持ちと、覚悟が滲む。
My landscapeは誰のlandscapeなのかって、多分渡辺さんのなんでしょうね。
2.SHARR
しゃらくさい歌。
モモコグミカンパニー作詞。
ミクスチャーロック黎明期のような雰囲気。レイジとかフーファイターズってこんな感じなんじゃなかったでしたっけ。サビのシャウトのバッキングで鳴っているアルペジオがイカしている。
歌詞の内容はリアルだ。My landscapeのような抽象はない。
多分新卒で入った会社で、お局様たちに邪険にされながらも懸命に働いた後、帰りの電車で思ったことを叩きつけてるんだろうと察せられる。
すごくわかるよ、その気持ち。
後、シャウトやりすぎて喉壊さないか、僕は心配です。
3.GiANT KiLLERS
前に書いたと思ったら書いてなかった。
先だって発売されたミニアルバム「GiANT KiLLERS」のリードトラック。
OTNKの作詞に代表される、BiSHの空耳作詞担当、竜宮寺育氏が書いている。が、竜宮寺節は控えめである。
この曲はアルバムでの文脈というよりも、「オーケストラ」、「プロミスザスター」とリリースされた後の曲としての立ち位置で見た方がしっくりくる。泣メロ二発をリリースした後の、GiANT KiLLERS。ストリングスをふんだんに使うスケールのまま、これまでのBiSHの流れを汲んだような一曲。そして、My landscapeへと繋がる。
PVも曲の雰囲気をよく表していて良い。
PVありきの曲なんじゃないかって気もしてくる。
4.SMACK baby SMACK
再び竜宮寺育氏の作詞。
もう、みんなブリブリにノっている。歌ってて楽しいです感が存分に伝わってくる曲。
曲調もベースリフからして王道ど真ん中だと思う。ロッキンの中くらいのステージでやってるバンドが提げてても全く不思議じゃない。
Bメロラストの
物理の法則か?
でペンタトニックスケールをベタベタに駆け上がった後の
逆らっていたくない
心地よく縛られて
というサビ。たまらない。垂涎。
そして何しろ、大サビ前のアユニパートである。
ショタボイスとして名を馳せたアユニ・Dが精一杯のドスを効かせて歌う。ハムスターが牙をむいたようなその声が、ちゃんとかっこいい。成長著しい。
5.spare of despair
アユニ作詞。
スカっぽいリズム⇨シェイク!シェイク!⇨サビに行くと思ったらCメロでブレイク⇨四つ打ちシェイクなサビ
燃える展開。心底踊りやすそうな曲調である。アイドルのライブではコールするのが正義みたいな風潮あるけど、この曲とか普通に踊れるじゃないの。コール勿体無い。
そして、サビではハモってる。
BiSH「All you need is love」以来ではなかろうか。
歌詞も秀逸。spare of despair、絶望のスペア。ディストピア極まりないタイトルだが、身の丈で感じている絶望を歌っている。
サビの頭
失踪した気持ちに出会って絶望
の語呂の良さったらない。全く無駄なく歌詞が音に乗っている。テトリスの長い棒の如き収まりの良さだ。
後頭部がバイオレンス
何千回の過去純情
あたりもなかなかのパワーワード。
6.プロミスザスター
素直な良曲。周知の階段を駆け上がっていった曲。
書きたいことはあらかた書いている。
7.JAM
モモコグミカンパニー作詞。
ミディアムテンポのバラードである。曲の入りの、ミュートめっちゃかかったドラムとイントロのシンセサイザー。2000年代後半のファンキーモンキーベイビーズとか、Greeenとか、あのあたりの曲調を彷彿とさせる。ピアノは終始なり続けている。
放課後の教室に西日が入っている光景のような、セピアな情景を想起させられる音像。
曲調もそんな感じで、歌詞も自分の哲学を葛藤するような内容。
すごく飲み込みやすい曲だし、取り方によっては毒にも薬にもならない曲とも言える。ゴールデンタイムに流すならこの曲。お茶の間に安心して流せる。
8.Here's looking at you, kid.
リンリン作詞。
やったぜ、脳みそストップロックの時間です。あらかたパワーコードぶん回しプレイで押し切れる。ヤバいTシャツ屋さんあたりが弾いてもおかしくない曲。
「楽器を持たないパンクバンド」を標榜して、1枚目、2枚目あたりまではさもありなんパンク然とした楽曲が多かった。しかし、最近は売り出し方の方針なのだろう、パンクパンクした曲が少なくなっていたように思う。
変わったことは何もしない。ただ、それがいい。
JAM、Here's looking at you, kid.の流れで、一服といったところだろうか。
9.ろっくんろおるのかみさま
セントチヒロ・チッチ作詞。
これはあれだ、ポジティブになった「ファーストキッチンライフ」だ。
Aメロのドラムロールの間に歌詞を突っ込んで行く戦法は「ファーストキッチンライフ」でしかない。
前アルバムのキラーチューン「ファーストキッチンライフ」はリンリンの作詞で、それはそれは負のオーラが充満した曲だったのだけれど、「ろっくんろおるのかみさま」は打って変わって爽やかな内容となっている。遊戯と闇遊戯の関係に近いだろうか。
君に届けば 夢で逢えたら
道の先に恋い焦がれ毎日
何と素直な歌詞かと思う。
割と硬質のメロから、開放感あふれるサビへ素直に繋がって行く。
2番サビのアイナの声が完全に楽器になってて笑いが止まらない。
10.BODiES
モモコグミカンパニー作詞。
bodiesと聞いて、映画スタンドバイミーの原題がThe Body(死体)だったって話を思い出した。しかしこの曲では別に死体のことを歌ってない。全く関係ない。
90年代のロックによくあるようなギターベースユニゾンのリフから、スカっぽいAメロ。松隈氏の中ではスカっぽいリズムがブームなのかもしれない。前作の「Hey gate」にしろ、本作の「spare of despair」にしろ。
モモコはエモさを歌詞に打ち込むのがうまい。先述のオーケストラ戦法だ。わかりやすい言葉で悲しみを歌ったり鼓舞したりする技術に長けていると思う。
Aメロ
全部作りもののような気がしてる
Bメロ
生きる意味の旅に 一人で出かけても どうせ見つからない
サビ
切り裂いた 意味なんてもういらないよ
起承転結のお手本のような歌詞回し。わかりやすさに僕らは心打たれる。
11.ALLS
アイナ・ジ・エンド作詞。
嵐でいうサクラップのような合いの手が入る。
High and Mighty Colorというバンドがあった。ORANGE RANGEに代表される沖縄ブームの頃だった。かわいい女性とかっこいい男性のツインボーカル。女性の方がメロを歌っている中、男性はデスボイスで合いの手を入れる。それを支えるめっちゃうまい楽器隊。
好きだった。
ALLS。冒頭のデスボイスやウェットめっちゃかかったボーカルの合いの手。僕の中でHigh and Mighty Colorの影が見え隠れしている。気になって仕方ない。
特筆すべきはチッチのノリノリ具合。アイナ作詞にも関わらず、チッチの節回しのドンズバでハマってる。サビのチッチの歌声にはもはや美しさすら感じる。
12.パール
ハシヤスメ・アツコ作詞
これまた壮大なロックバラード。ドラムにかかったリバーブがどう聞いてもライブハウスの鳴り方じゃない。ホールやアリーナの鳴り方。
展開も熱い。
Aメロ⇨Bメロ⇨サビに行くかと思いきやまたAメロ⇨Bメロ⇨楽器全開ストリングス大爆発のサビ
焦らすだけ焦らしてサビに入る。
サビでは終始ドラムがスネアとバスドラを連打していて、音が猛烈な圧力で迫ってくる。黙っていても心拍数上がってくる。
13.FOR HiM
松隈ケンタ・J×S×K作詞
壮大な楽曲群がひしめくGUERRiLLA BiSHの最後の曲は、バンド編成で弾ききることができる、シンプルなロックチューンだった。
RADWIMPS界隈のバンドを彷彿とさせるイントロ。
岡崎体育界隈のコミックバンドやレイザーラモンRGを彷彿とさせるようなメロの歌詞。
一転、真面目なサビの歌詞。
何を伝えたい曲なのかと、アルバムの最後にこの曲をなぜ持ってきたのだろうかと考えてみたんだけれど、まぁ、こういう事件が以前あった。
BiSHの姉妹グループBiSの中心人物プー・ルイにダイエット企画を仕掛けるも失敗し、活動休止を言い渡すという流れ。
これがあまりに酷すぎるとそこそこの騒動になって、渡辺氏もまずまずの風当たりに晒された。
という一件に対しての、FOR HiMであると。
言葉一つが足りなくて
君に愛が届かなかったんだね
後ろ指を刺されながら
君に愛伝えればよかったんだね
計3回繰り返されるサビのフレーズが、途端に形取られて行くようである。
それ以外の歌詞で岡崎体育をするのも、このフレーズを聞かせたかったらなのだろう。
プー・ルイに向けた、プー・ルイへの懺悔をBiSHを使ってやろうというのも、なかなかの根性だとは思う。
書いた
ウワァァァァっと書いた。13曲分。
書いてみて思ったんだけれど、音楽のことを知っているようで、実は全然知らない。このリズムを言葉で表したいとか、この曲調を表現したいとか思うのだけれど、適当な言葉が全くもって思い浮かばない。鍛えなきゃならないなと、改めて思った次第。
さて、いよいよ売れにきている。売れている、BiSHだ。
別にこれを読んでもらってBiSHを啓蒙しようとか、そういう気持ちはあまりない。音楽を楽しむ方法が多様化の一途を極めている世の中で、3,000円払ってCDを買うというのは前時代的な話だろうから、CD買ってほしいとも思わない。
BiSHが周知されるようになって、誰かがアルバム名とかで検索かけた時の一助にでもなればいいと思う。
以上、「GUELLiRRA BiSH」のあらましでした。