徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

とりあえず棚上げしとこう

本件の採決は棚上げとなりました。

棚上げ。

読んで字のごとくの最右翼。棚の上に上げてしまうから、棚上げ。一時保留。ちょっと今すぐは判断しかねるから棚上げ。

全くもって解決していないのにもかかわらず、棚上げした瞬間、僕らはなんとなく一つの議題が片付いたような錯覚を起こす。目の前から問題が見えなくなるため、気持ちが楽になる。変わらず、棚の上で鎮座しているというのに。

なんとなく頭の片隅に棚上げ案件があるうちはいいが、多くの場合、いとも簡単に忘れ去られる。忘却の彼方へ。

そんな折、棚卸しなんていう行事がある。

片付けに際しての物理的な棚卸し、決算のための棚卸し、個人的な整理をつけるための棚卸し。帳簿がなくたって、とりあえず今持ちうる財産を確認するのである。

そこで気づく。棚上げ案件が目の前にまた出てくる。

いつだったか、面倒くさいからって棚の上に放り投げた事案が、埃をかぶってカビが生えて腐りかけた状態で突然顔を出す。

「よっ、オラ、棚上げ案件。忘れたなんて言わせねーよ。どうする?どうする?」

 

とりあえず置いておこう。

とりあえずしまっておこう。

とりあえず、とりあえず。

「とりあえず」」と「棚上げ」」のツーカー具合は、爆弾低気圧と豪雪のそれに匹敵する。とりあえず置いたペットボトルは見て見ぬ振りをされ続けるうちに本数が増える。とりあえず仕舞った服は2年後くらいにブッサイクな顔して出てくる。

実家の僕の部屋は、とりあえずが溢れている。

とりあえず手をつけた問題集と、書き始めのノートが棚上げされたまま残っている。中には解きかけの状態で保存されたノートもあり、これだけ見たら志半ばで夭折した天才数学者の筆跡のようにも見えなくもないけれど僕は元気です。解いている問題も高校生であれば大抵解ける問題です。

一人暮らしの部屋の方にはとりあえず隅っこに押し込んだテレビがある。棚上げではない、隅押込み。今時、厚さが5センチくらいあるテレビ。引っ越しの時に手段を選ばずに投げてしまえばよかったのに、とりあえず持ってきてしまったが故の棚上げ案件。

 

「とりあえず」を撲滅しさえすれば、あらゆる棚上げ案件も撲滅されて行くに違いない。

とりあえず文章書きながら、そんなことを考えている。