徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

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大丈夫?俺と一緒で。

終電間際の京浜東北線。場所は、横浜。床には誰が落としたか知らないゴミが散らばり、乗客の呼気にはもれなくアルコールのフレーバーが含まれている。僕ももれなくその中に身を投じている。

ある男女が入ってきた。合コンか、なんなのか。初めて出会った男女のようである。まずまず深い夜まで共にしているのだから、お互い嫌悪感を抱いているとかそういうわけではない。どことなく距離はあるものの、仲睦まじい感じで彼らはやってきた。

僕の耳に一番最初に入った言葉が、男性が放った言葉だった。

「大丈夫?俺と一緒で。」

これを尋ねる心中たるや。

側から見ていれば、そんなこと聞くなよと思う。お前それ女の子に聞いてどうするんだよと。よく言う、セックスしてるときに気持ちいいかどうかを尋ねる男のダサさみたいなののカジュアルバージョンが、「大丈夫?俺と一緒で。」だ。

たぶん、2人で合コンの集団を抜け出してきたのだろう。刹那の意気投合、瞬間のシンパシー。男女はわからない。一瞬の出会いが全てを決めることだってある。フィーリングカップルランデヴーを決め込んだ2人が京浜東北線に乗り込んで、堪らず男が口走った、「大丈夫?俺と一緒で。」

ぶっちゃけ、これを尋ねたくなる心情は死ぬほどよくわかる。とにかくこの男は自信がないのだ。自分に自信がない。だから、大丈夫と言って欲しくて、あえて「大丈夫?」と尋ねる。自分を認めるために。認めてもらえている事実を確認するために。しかし、しばらく社会で生きていると、この虚勢すら誰もが感づくようになってくる。あぁ、こいつは自分に自信がないんだな。だからこんなことをあえて女の子に尋ねているんだな。虚勢を見破られた時点で、その言動は猛烈なダサさを帯びる。

「大丈夫?」を聞かずに済むのは、生来の自信家か、虚勢に虚勢を塗ったくった愚か者だ。楽しかった?とか大丈夫?とか、確認作業をすることなく、俺がいるんだから楽しいに決まってんだろ。ってかそもそも付いてくる段階で楽しいんだろ。みたいなロジック。天性のやつもすごいし、演じきれるやつも凄い。どちらにせよ、真似できない。

 

車両に突っ込んできた男女はどうやら逆方向に向かいたかったらしく、賑やかに退場して行った。残された僕らはしめやかに彼らを見送った。うるせぇな半分、頑張れ半分である。

大丈夫、君と一緒で大丈夫だよ、きっと。

 

さて、寝るか寝ないか。逡巡である。

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