徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

常世の春、常呂

「ところ」と読みます。

サロマ湖にほど近いホタテのメッカ。住人の多くは漁業従事者で、ホタテにサケにマスにと、魚群探知機を巧みに操り、風を読み、オホーツク海のバイキングと化している。そんなバイキングの中でもアクの強い人間が一人、僕の親父の腹心の友である。北見の我が家から車で40分程。僕も幼いころから事あるごとにお邪魔しては、いくら丼を貪った。おかげで健康に育ちました。ありがとうございます。

家族ぐるみで至極親密にやり取りをしている。だから毎度帰省の折には必ず遊びに行き、やはり過食の限りを尽くす。

今日もそうだった。

常呂と言えば、カーリング。それこそ常世の春を味わったであろうLS北見の本拠地がある。

アドヴィックス常呂カーリングホール | 北見市

平昌オリンピックのLS北見躍進の際には、同郷だからって超親しげな風にして話していたんだけど、実のところはカーリングホールにも入ったことのない赤の他人であった。状況脱却の為にカーリングホールに尋ねようとした。しかしその前に近くの食堂で酒を飲む。

再掲するが、オホーツクのジャックスパロウが跋扈する土地だ。海産物が上手くないわけがない。これから漁師の家に行ってしこたま海の幸を食べるというのに海鮮丼を食べた。そういえば、魚を食べると頭が良くなるって教育テレビのなにがしが昔教えてくれた。あぁ、これは天才爆誕だな、四半世紀生きたってまだまだ賢くなれるなぁ、とうそぶきながら舌鼓を打った。相当おいしい。

酒もそこそこに飯を食って、カーリングホールに向かう。たまたまLS北見のメンバーがみんな揃っている、大変に運がいい日だった。本州での僕は彼女らと大変親しい間柄なはずなのだが、いざ目の前にすると圧倒的に他人であり、圧倒的に選手と一般人であった。観客席から彼女らの同行を見つめ、大学生の練習を見つめた。カーリング場にも行ったこともLSメンバーと会ったこともない元北見市民が、カーリング場に行ってLSメンバーを眺めたことのある元北見市民にランクアップした瞬間であった。

その後、LS北見所縁の喫茶店に行き、ごっついココアフロートを食べた後、漁師友人宅へ。

胃袋を休ませるとか、お腹がすいたとか、そういった価値観での食事ではなく、「おいしいものがそこにあるから食べる」という贅沢極まりない食事に次ぐ食事。漁師宅には酒のつまみだらけであり、やはりホタテの刺身は美味しく、サケの内臓を甘塩っぱくして炒めた漁師賄飯が飛び切りおいしかった(サーモントリッパって名づけたら、確かに美しいかもしれない)。

 

常呂の漁師は横のつながりがとても強い。部落の中の多くが遠戚関係におり、親戚同士家を行き来しあって飲み会を開いている。漁師宅で飲んでいると、今日もどこからともなく親戚が集まってきて、そこそこな人数の宴会となった。中には赤ちゃんも二人いて、おじいちゃん世代とお父さん世代と子供世代が入り乱れる。大人たちが話している間、子供を誰かがあやし、子供が飽きたころにお母さんのところへ戻っていって、宴会の中心に子供が躍り出る。

核家族化がこうまで進む前の家族の形を垣間見たような気がする。飲み会の席という刹那の瞬間だったとしても、何世帯もが折り重なって生活をなしていく。そんな文化が流れていたのなら、どれだけ生きやすいだろうか。子育てのストレスや結婚生活で折り重なるストレス。その源流が人手不足だとしたら、それをを第三者に外注することで解決するのではなく、知り合いや遠戚で解決していく。古き良きシステム。平たく家庭が欲しくなったし、今日のような環境下で育てられるのなら子供がいてもいいなと思った。

 

そうはいっても本当にお腹がいっぱいで、お腹がいっぱいだとどうしても眠気がやってくる。抗いようのない魔物は瞼の奥からひたひたと忍び寄り、一瞬で瞼を吊っていたロープを切り落とす。閉幕の合図である。

飲み会続きで疲れている脳みそを、今晩くらいは休ませてあげたいと思う。

台風と、仕事が、すぐそこで待っている。