徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

向かいのマンションのおっさん全裸事件

人が密集しているで噂の東京。アパートマンションが所狭しと軒を連ねる。

我が家も住宅地の中にあって、区画の中だけでも5棟ほどのマンションが建っている。さして大きくはないマンションだが、何百人という人の生活がひと区画に詰まっている。

 

僕の部屋の向かい側にもマンションが建っている。お互いのマンションのベランダが向かい合っているため、基本的にカーテンを閉めていないと覗きたい放題の覗かれたい放題となる。

ラブコメとかだと、向かいの家に住んでいる男女が男女して男女になって男女へと発展して行くお話が展開されるところだが、現実はそう上手くはいかない。僕の部屋の真向かいに住んでいるのは立派なおっさんだ。

 

いつか、いつかこんな日が来るのではないかと思っていたのだが、見事予感は的中てしまった。

洗濯物を取り込もうとカーテンと窓を開けた先、全裸のおっさんが佇んでいた。

 

あぁ、おっさんだ。素っ裸のおっさんだ。

マンション同士、そこそこな距離があるから顔もわからない。駅ですれ違っても全くわからないレベルの距離感。でも、そこに素っ裸で立っている。毎日顔をあわせる同僚たちの素っ裸も見たことないのに、家が向かいなだけで全く知らないおっさんの素っ裸がそこに。

僕は、どう受け止めたらいいのだろう。

教えてやるわけにもいかず、見つめるわけにもいかず、すっとカーテンを閉めて時が過ぎるのを待つ。おっさんの気づきを待つしかない。夜半、室内が明るいと外から丸見えになるのを知らないはずがないのだ。何しろ彼はおっさんである。不意に認めてしまったシルエットも、完全におっさんのそれであった。ベテランの腹、熟練の毛。だから早く気付け。気付いてくれおっさん。

 

しばらくして開けた窓には、カーテンが閉まっていた。奥から漏れる光。あの光の奥に住むおっさんの素っ裸を、僕は知っている。

なんだこれ。なんなんだこれ。

それだけです。