徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

TikTokとThe Beatles

世の高校生を中心に旋風を巻き起こしているTikTokであるが、未だ興奮冷めやらない様子。僕みたいなおじちゃんにとっては可愛い女の子ウォッチするだけのツールなのだけれど、同じ音楽に乗せて同じダンスをする色々な可愛い女の子を15秒ごとにパチパチザッピングするのに少し疲れた。しばらく見ていない。

余が中高生の頃にごく個人的に旋風を巻き起こしていたのが、The Beatlesである。中学二年生の頃、風邪を拗らせて1週間くらい38度の熱が出て、朦朧とする意識の中The Beatlesのベストアルバムを掛け続けてからというもの、何かが目覚めたらしい。ビートルマニアとまではいかないものの、普通の人よりちょっと詳しいくらいにThe Beatlesを好きになった。

 

昨今の流行である米津玄師みたいな、言葉をバスドラの間にありったけぶち込みんだような作風に疲れて、今The Beatlesを延々リピートしている。

ふと、僕は悟った。The BeatlesはTikTokである。

 

The Beatlesの曲、特に初期、アルバムでいうとHelpまでの曲は実に短い。端的である。2分で終わる。しかも曲の構造も単純で、2つのバースを使い回すだけだったりする。Love me doあたりがまさにそうだ。しかも彼らはラブソングしか歌わない。一個のテーマについて、手を替え品を替え、様々な角度からアプローチをかける。

これはまさに、TikTokではないか。

15秒の時間制限による端的な表現、単純なダンス。同じ曲の上で個性を競う。個性というのは、ダンスのキレか、容姿か。そしておじちゃんたちは熱狂する。

 

テレビの1時間番組から、YouTuberたちが工夫を凝らした10分間に覇権が動いていこうとしている。1時間ですら、長い。まして15秒に慣れたらなおさらである。

音楽でもそうだ。最近の曲は長い。

X JAPANのArt of loveなんかは極端な例だけれども、みんな大好きMr.Childrenだってバラードを作らせたら平気で6分7分と歌う。

でもどうだ、Yesterdayを聴いてみろ。こんな上質なメロディ、気合のBm、ジョンレノンの手を一切借りないストリングスアレンジ、叙情的な昨日の懐古、ドラマティックな曲展開ですら2分5秒だ。2分5秒。

The Beatlesだって、サージェントペッパーズ以降は曲も長く複雑になりだした。歌詞カードを見ただけだったら一瞬で終わりそうなI want youは7分間オノヨーコへの愛を叫ぶ。複雑化して行くのはアーティストの常、時代の常なのかもしれない。

しかし歴史は繰り返す。

再び、端的なものが求められている。

いつかandymoriが出てきたように、なにかとてつもなくクリティカルな音楽を奏でて一世を風靡するバンドが登場する気がしてならない。

楽しみである。