徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

町工場とヤクルトのおばちゃん

晩秋の東京は大田区。大量生産、インダストリアルな香りが漂う町。どこかの何かの部品を作る工場や、ネジ専門の小売店なんていうスーパーニッチな商店が軒を連ねる。めっきり肌寒くなってきたというのに、小太りなおじちゃん達が薄着で汗を垂らしながら何かの部品を作っては運び、側ではラジオがかかる。軒先に出ているホワイトボードには週末の競馬予想が書き出され、昼前になると工員たちがああでもないこうでもないと話しに花を咲かせている。

そこにヤクルトのおばちゃんがやってくる。おばちゃんは厚着である。冷え性なのだろう。真冬じゃないのにミシュランタイヤのキャラクターのように着ぶくれている。

工場にヤクルトを届ける。

半袖のおじちゃんと着ぶくれたおばちゃんが世間話に花を咲かせる。

寒くないのか、暑くないのか、昨夜の雨には参った、今朝は晴れてよかった、洗濯物が乾きそうだ、息子の受験が佳境だ。

たくさんのヤクルトで頭もお尻も重くなった自転車に跨ったまま片足をつけて話しているおばちゃんに気遣って、おじちゃんが話を切り上げる。お世話様、また。


そんな会話を日向で転がって見ている猫になりたい。