徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

傘との相性

生理的に無理、なんか合わない、嫌われてる気がする、仕草が気に食わない。僕らの人間関係は好き嫌いと気に食う食わないが組んず解れつ絡まり合って、ちょっとやそっとじゃ理解できない。遠くから見たらうまくいってそうな集団もよくよく見たらバラバラだったりする。さも、モザイクアートに似たり。

 

好きとか嫌いとかは抜きにして、どうしても相性が悪い存在。何を隠そう、傘である。

傘は、傘だけは、僕の手からたやすく離れていってしまう。ビールのジョッキ、箸、枝豆の類、マイクやタンバリンの類は掴んで離さないのに、傍にある傘だけはなぜか掴めない。

せっかちでもないと思う。せかせか出来るほど、動きが俊敏じゃない。記憶力がグズグズなわけでもないはずだ。仕事は別として、友人各位の他愛のない話なんかは結構な深さで記憶に刻まれている。なのに、傘を自分が持ってきた事実を簡単に忘れる。外に出て、降ってる雨を見て思い出すし、雨が止んでたりしていたら延々思い出さず、次の雨の日に、自分が傘を忘れたことに気がつく。

高価で、いいものを持っていたら意識するから失くさなくなるなんてことはない。猿に半導体を渡すようなものだ。価値も知らずに確実に壊す、確実に失くす。

 

もはや傘を失くさない人の気が知れない。よくもまぁ、傘の存在を脳みそに取り留められる余裕があるものだ。席を立つ時、店を出る時に、傘がなぜ頭をよぎろうか。傘…傘…と念仏でも唱えているのだろうか。僕も、傘を店に置く時には思うのだ。あ、これ忘れて帰るだろうな。今のこの気持ちを、店を出る時も忘れないようにしような。と、切に考えた末に、簡単にロストする。馬鹿である。たまに泥酔時に傘をきっちり持って帰ったりして、酒の功名を感じたりもする。

 

そういうわけで今日も雨であった。帰りには雨は上がっていた。僕は、見事に傘を忘れてきた。

次の雨の日、コンビニまでの間を僕は濡れながら歩くことになる。晴れの日に傘を買うしかないが、晴れの日に傘なんて頭に浮かばないからだ。学びもせず、ただ、忘れ、濡れる。

業を認めながら、進んでいく。