徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

チキンかあさん煮定食

このところ、不適切動画で不名誉な看板を掲げてしまっている大戸屋である。アルバイトの管理、教育は難しいですね。SNSに、便利に殺されている感じ。管理しきれないテクノロジー。普段技術を使って万象を飼い慣らしている気がしている愚かな人間諸君、今すぐハイデガーを読みましょう。

 

技術とは何だろうか 三つの講演 (講談社学術文庫)

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どうあれ、昨日夜ご飯が大戸屋だった。

ファストフードとファミレスの間の価格帯で、そこそこ値段をとるけど、そこそこちゃんとしたご飯を食べられる。何より、弊最寄駅の高架下にあるので、そこそこに便利だ。そこそこ頻度で利用している。そこそこの総合力。全区間7位あたりの区間順位でそこそこ走って結果総合4位みたいな強さが、大戸屋にはある。

僕は大戸屋の黒酢あん定食が好きだ。ほぼ一択。迷わず黒酢あん定食を食べる。迷うのも力がいるから、脳みそを止めて、機械的に黒酢あん定食。淡々と黒酢あん。

なのだけれど、昨日はチキンかあさん煮定食を食べた。

ご存知のかたも多いだろう。黒酢あん定食と並び立つ大戸屋の4番サードな定食だ。それこそ、黒酢あん定食や蒸し鍋定食など、説明口調というか他人行儀な定食名が多い中、チキンかあさん煮定食というネーミングの飛び抜けたキャッチーさ。キャラ立ちがはっきりしていて絶対ただのモブじゃないと確信させられる。

これまでの大戸屋ライフにおいて、視界の隅では確かにチキンかあさん煮定食を意識していたものの、頼むことは多くなかった。入店の時点で僕の脳裏にはすでに黒酢あん定食が居座っており、チキンかあさん煮定食の入り込む余地がなかったからだ。

何を思ったか、何を感じたか、サブリミナルの畔からのサインに任せて頼んだチキンかあさん煮定食。衝撃的な出会いだった。

そもそも、ビジュアルを想像できるだろうか。ハイデガーを今手に取ろうとしている人間諸君。チキンかあさん煮定食と言われ、その造形を想像できるだろうか。大戸屋のサイト貼っておくので適当に見てみてください。

www.ootoya.com

チキンカツと根菜やら大根おろしやらが旨味たっぷりの出汁に浸かり、煮詰められている。かあさんがいつか作ってくれた優しい味に似ている。故郷を思い出す。チキンかあさん煮定食。

確かに、出てきたものはこのチキンかあさん煮定食だったのだけれど、驚いたのがその煮詰められ方だ。

猛烈に煮立っていた。原初の海のごとく、煉獄の風呂のごとく、出汁のあぶくが鍋の底からグラグラと溢れている。チキンかあさん煮の優しい音感とは全く異なる、怒りにも似たパッション迸る鍋が目の前に運ばれてきたのだった。チキンとかあさん。臆病なほどに優しく、繊細な心配りができそうな語の組み合わせからは想像がつかないほどの煮立ち方はおそらく「ビーフストロガノフ」の語感の方ががマッチしていただろう。ビーフもストロガノフもしていないけど。ちなみにビーフストロガノフはストロガノフ家で作られたビーフ料理だからビーフストロガノフの料理らしいですよ。

 

火の通り方、煮立ちのインパクトは強烈だったものの、味は至って美味だった。身体にも良さそうですね、チキンかあさん煮定食。あんだけじゃない、大戸屋の新たな味に出会いました。ただ、それだけの話です。