徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

現代人は赤血球に似たり

品川から横浜あたりまでの京急の駅は全駅高架になっている。飛び込む人が多かったのか、開かずの踏切が多かったのか知らないが、必ず地面から浮いている。今僕がよく使う京急蒲田駅も例に漏れず高架であり、3階に上り、4階に下りのホームがある。さらに羽田に向かう路線が加わり、初見の来訪者をことごとく駆逐している様子を見受ける。

京急蒲田駅の東側から歩いてくると、ちょうど羽田に伸びる線路と横浜に向かう線路が枝分かれしている部分を見上げることができる。毎朝見上げているのだが、この頃それが血管にしか見えなくなってしまった。生々しい弧を描きながら分離していく二つの巨大な道。大動脈が太もものあたりで分かれているようにしか見えない。高速道路もそうだ。生麦のあたりに大きなジャンクションがあるが、あそこも血管にしか見えない。ぐるぐると螺旋上に上昇していって、大きな道路につながっている。毛細血管から徐々に大きな血管へと寄り集まっていき、大動脈に流れ込む様子に見える。碁盤の目のようにきちっと区分けされた道以外の、道路、線路、うねって伸びる道という道、全て血管に見える。

 

以前、一生懸命資格の勉強をしていた。何の試験だったかといえば、これである。

 

 

第2種衛生管理者 過去7回 本試験問題集 '18~'19年版

第2種衛生管理者 過去7回 本試験問題集 '18~'19年版

 

 

無事に合格できたのだが、試験内容には生理学も含まれていて、否応がなしに血液がどうだ、臓器がどうだと学ばなければならなかった。人間の体は恐ろしく良くできている。進化の歴史が最適化していったとはいえ、栄養配給から老廃物の再利用、本当にいらないものだけを排出する循環システムだったり、五感や平衡感覚を司る耳目、口、全てを統括する脳、奇跡としか思えないバランスで進化を遂げているのが人間、生物だ。

体内での赤血球の役割といえば、酸素や栄養分を全身の細胞に巡らせることにある。肺から出た赤血球は細胞に酸素を、肝臓から出た赤血球は細胞にアミノ酸やブドウ糖を巡らせる。そして細胞から老廃物をキャッチアップして戻ってくる。血液の運搬屋さん、赤血球。

線路が血管に見え出してからというもの、人間が赤血球に感じられて仕方がない。自宅でご飯食べたり寝たりして蓄えた力を、血管を流れる電車に乗って会社までいき、働くとともに老廃物をキャッチアップしてまた家に戻る。上り線が動脈で、下り線が静脈か、はたまた逆か。人によりけり。脳細胞だかシナプスを拡大した映像が銀河に似ているから、脳内にも無数の銀河が広がっており、もしかするとこの銀河系ももっと巨大な何かの細胞に過ぎないのかもしれない。そんな説が一時期流行った。真偽はどうあれ、自然の摂理も人間が作ったものも、大抵同じような場所に着地するのかもしれない。そのうち、人間が動くことが少なくなり、今以上に電波が血液・赤血球の役割を担っていく世界が待ち受けているのだろう。でも、中身が変わっただけで、システムは変わらない。

 

会社という巨大な臓器に首根っこを掴まれて赤血球をロールプレイしている日々。頭が良過ぎてどうかしていた高校理科教師が、自分の首からぶら下がっているネクタイを掴んで、「このネクタイの先っぽは誰が握っているんですかねぇ〜〜」と話していたことを良く思い出す。そのうち自分が臓器担ったとて、今度は他の臓器とのバランスや身体との関係で頭を悩ますのだろう。腎臓や肝臓は脳みそとの臓器関係で悩んだりしているのだろうか。なんかありそうである。ガンになっちゃってごめんな、お前らには転移させないようにするからな。みたいなやりとりとかありそう。

 

今日もドクドクと京急線は電車にたくさんの血球を積んで走り出した。

ちなみに赤血球の寿命は120日。なんか人間っぽくないっすか。