徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

品川駅港南口前広場のカオス

オフィス、酒場、広場、駅。ぐちゃぐちゃだ。渋谷や池袋は娯楽に寄っている。丸の内と八重洲はオフィスに寄っている。けどここ品川。オフィスと娯楽が組んず解れつ、取っ組み合いを繰り広げた末のカオスが織り成されている。

各企業で働き方改革が革新的に繰り広げられ、午後6時を回る頃のオフィス街は家路を急ぐ人で溢れる。帰宅ラッシュ第一陣。健全な帰宅である。それを待ち受けるはキャッチのお姉ちゃんだ。前掛けのように料金プランをかけて、明らかに駅に向かっているサラリーマンたちの足を引き止めようと躍起になっている。半袖にショートパンツ。肌寒くなってきている夕刻の品川で真夏の格好。四方のサラリーマンに声をかけるべく、テニスの構えのような姿勢で獲物を狙っている。その対面では、広場に行き交う人に訴えかける街頭演説。幸福実現党。かつて高校生の頃、幸福の科学に勧誘されたことがあるため、幸福の科学という存在にどことなく親近感を感じている。思想に関しては全く親近感は感じていない。街頭演説では香港のデモについての言及だ。陰謀を大いに語り、そこに絶妙に絡んでいく大川隆法の存在。もうやばい。熱意がすごい。さすが大川。ナイルですか、長江ですか。これら帰宅ラッシュとキャッチ、演説を囲むように、待ち合わせの僕たちがいる。箱庭の端っこに傍観者のごとく佇み、それぞれ忙しなく動き回る人たちを見ながら、ただ待つのみ。最も生産性がなく意思のない存在として、壮大な演劇に参加しているようである。ませてきた小学生あたりが学芸会でやりたがる役柄だ。なんの思い出にも残らないぞ。やめておけ。


それから数時間。

帰り際にはもう一山帰宅の波が生まれ、選挙カーは立ち去り、キャッチのお姉ちゃんはなんとまだ広場に立っていた。殊勝なことである。

さっきの傍観者は、帰宅の波の一員として役柄を変え、家路につく。一目散に、キャッチなどにも目をくれず。

カオスが緩んだ夜の品川であった。