徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

空港はもはや故郷

羽田に着くとなんとなく地元に帰ってきた気になる。
別に空港が、好きなわけじゃない。
むしろ荷物を預けるまでは重い荷物を引きずりながら歩かなきゃならないから喜んで行きたい場所ではない。

上京したてのホームシック真っ盛りの頃は東京中が敵だった。
駅も電車もつり革も人混みもキオスクも。
一刻も早く地元に帰りたい。
地元こそが心休まるところで、それ以外では気が張っているような状態だった。
だからあー帰ってきたなぁって感じるのも、地元の空港に着いた時だったり、家に着いた時だった。

しばらくして東京に慣れると、地元がじわじわと増えてくる来る感覚を覚えた。
まず、家が地元になった。気付けば最寄り駅も地元になったし、グラウンドのある駅も地元になった。

それでも帰郷は心が踊る。わくわくする。たまに訪れるからというのもあるだろうし、そもそも心の何処かで田舎を求めているんだろうと思う。
北からも地元は伸びてきて、地元の空港に着いた時に感じていた安心感が羽田で感じるようになり、品川で京急に乗った時に感じるようになった。空港も、駅も、悪くはないと思えるようになった。


この地元の感覚を丸ごと東京に感じることが出来た人が、東京にずっと住み続けることができるのだろう。
今やっと東京にも地元が増えてきたところだけれど、それは東京の構成要素のメインの部分とは程遠いところで、そのメインの部分への愛着はまだ湧いていない。きっと今の町を離れるとまた東京は僕に冷たい顔を見せるに違いない。
地元のような、実家のような無条件の安心感はそこにはない。がんばって馴染んだ先の安心感があるだけ。

曇り空を割って降下した飛行機が、青と小麦色と土の色が切り絵のように貼り付けられた畑の上を飛んでいく。
その飛行機の中で、地元の景色を見ながら感じたことでした。
今日はあまり揺れない素晴らしいフライト。
気圧でベコベコになったペットボトルを片手に、親が待つであろう到着ゲートへ。
ただいま故郷。