musiQ
- アーティスト: ORANGE RANGE,Gerry Goffin
- 出版社/メーカー: ソニーミュージックエンタテインメント
- 発売日: 2004/12/01
- メディア: CD
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ORANGERANGEってどんなみかん?って人は過去記事参照。
musiQは前回の記事にも書いたように、ORANGERANGE最大のヒットアルバムであり、社会現象にもなったと言っていいほどの一大旋風を巻き起こしたアルバム。なにしろ290万枚である。とんでもないヒットだ。握手券付いてないのに。昭和の終わりや平成の初めの方に生まれた人は持ってる人も多いんじゃないかな。
なんでこんなに売れたかって、そりゃ時代の流れっつーもんが絡んでいるのは必至なんだがよ、しかし、曲が認められないと売れない時代だったと信じたいもので。しっかりとアルバム通して聴いてもちゃんと聞けるし、あぁ、売れるんだろうなという雰囲気はしっかり感じられるアルバムになっていると思う。
自分もこのアルバムやら、GLAYやポルノグラフィティのベストから音楽の扉を叩いたところがある。そういう思い入れのあるアルバムなので、まぁ、例によって全曲解説していこうと思う。私見露見視点で。
1 KA・RI・SU・MA
アルバムのオープニングはディスコな曲から始まる。曲の長さおよそ1分とすごく短いインスト曲。きっとライブ前のSE的な位置づけで作られたんだろうな。
ディスコな曲って言っても雰囲気だけだよ。
OKINAWA---------!!!!!!!!!の絶叫で曲が終わる。
彼らの郷土愛がひしひしと感じられるディスコミュージックだ。郷土愛(沖縄)+デイスコって、軸がぶれてる感がはなはだしい。しかしそれが軸。
2 チェスト
あら、格好いいリフ。
ORANGERANGE7枚目のシングルからの収録。シングルとしては10万枚限定販売シングルなんだけど、なぜかオリコン首位を獲得。ノリノリORANGEである。
ひたすらにボーカル三人がラップをかけ合って、サビでチェスト!!って叫ぶだけのごくごくシンプルな曲構成だ。わかりやすいことこの上ない。わかりやすいうえに2分間というオールディーズ顔負けの曲の短さである。
平成生まれのミーハー青年たちでカラオケに行っていれると大体盛り上がる。
ボーカルYAMATOは曲の最後に何かを叫ぶが、発売から10年以上たった今も何を叫んでいるかははっきりしていない。こういう謎が2000年続いたのがピラミッドとかのそれになるんだと勝手に思ってる。
普通にかっこいい曲だから是非。
3 ロコローション
Goffin-Kingによるロコモーションのぱくりだろと社会によって糾弾された、ORANGERANGE6枚目のシングル。
擁護するまでもなく、完全にメロディーから何から拝借してるので、後に曲のクレジットがORANGERANGE名義からカバーにかわった曲。
そうしたひと悶着もあって、世の中ではORANGERANGEといえばこれ!とされているところはある。確かにキャッチーで聴きやすい。
AメロBメロを文字数多い感じで繋いで、サビでわかりやすいフレーズとメロディーを入れるのが売れ線だと彼ら自身もわかってきたころの曲だろうな。パンチラパンパン。
4 以心電信
これもものすごい知名度を誇る一曲だけれど、シングルカットはされていない。平成ミーハー合戦カラオケで歌うとあほほど盛り上がる。
僕らはいつも以心伝心 2人の距離つなぐテレパシー
こんなくっさいことをドクターマリオのメロディーに乗せて歌うだけでここまでキャッチーで聴きやすくなるのかという衝撃。名曲である。
5 ZUNG ZUNG FUNKY MUSIC
ロコモーション、ドクターマリオの次はドリフのパロディーである。ベースラインからしてずんずんずんずんずんずんどこ。
後から出てくるミチシルベ~a rode home~のシングル盤のカップリングからの収録。ずんどこに囚われて曲が入ってこないがしかし、相変わらずサビはキャッチー。
曲の終わり、HIROKIのシャウトがしばらく続く。このタイミングを覚えるのに苦労した少年少女は多かったろう。
6 パディ ボン マヘ
曲名のままである。
パディ ボン マヘ
このフレーズをひたすら繰り返す。どっかの民族舞踊的なリズムに乗って。
途中入ってくるギターがちょっとかっこいい。くっだらない曲なのにそんなことを思ってしまう自分が悔しい。負けた気分。
幼いころ、ずっとパディボンマって場所があって、そこに行こうとするニュアンスで、パディボンマへ!って言ってるのかと思ってたけど、そうではないらしい。何の意味もなかったらしい。
7 シティボーイ
以心電信ほどの知名度はないが、ORANGERANGEを少しでもかじったことのある人は必ず知っているであろうほどの曲。
シティシティボーイ シティシティボーイ
この二つのバースで曲の大半は構成されている。意味のない言葉に節を乗っける才能はピカイチだと思うORANGERANGE。
疾走感と言い、エフェクトビヨンビヨンのベースと言い、素直なギターと言い、曲はとっても素直なダンスミュージック。
なぜシティボーイがここまで知られるようになったかというと、YAMATO歌うパートによるところが大きいと思う。
君の谷間にうずもれたいよ ベイベー
ねぇねぇ お願いだからパフパフさせてよレイデー
青少年には刺激的な歌詞である。歌うの照れるよね。そういうのって心に残るよね。わかるよ。
8 謝謝
あら、大人っぽいリフ。
ORANGERANGE初のジャズテイスト。サックスとか入れちゃってなんだか大人な曲に仕上がっている。
歌詞もパランペンペロンから
時間は経って去ってまた明日へ 風が舞って去って肌かすめる
そうさ待ってたって始まらない 空 ほら 星の花
なんてちょっと意味ありげなことを言っている。パランペンペロンからの落差で意味深に見えるけど果たして本当に深いことを言っている歌詞なのかは怪しい。甚だ怪しい。
作曲者のNAOTO的には引き出しの多さを見せたかったんだろう。ちゃんとかっこいいよ。大丈夫だよ。
9 男子ing session
パーティーソングだ。超ハッピー。中身なんてあってないようなもので、でも意味深なこと言おうと気張ってないだけ、なんか素直に日々の鬱々ばからしく思えてくる曲。
二曲連続でラッパが鳴ってるけど、こちらはスカパラ的ハッピーなラッパである。全然スカではないんだがな。
10 Beat Ball
ファンクなサビから始まったかと思ったら着地したところは全然ファンクじゃなかったという軸ブレブレソング。リズムがどんどん変わっていくからドラム大変だよねきっと。脱退の一因とも言えるかもしれない。
ORANGERANGEの曲の歌詞に意味なんて求めようとするのが無理な注文なんだと思ってしまえば、この曲も素直に楽しめる。語感を楽しめ。歌詞を読み取ろうと思っても三人のボーカルが好きたい放題なこと書いてるからわからないままである。
いつも電子音に頼りがちなギターのNAOTOが割としっかりギターを弾いている曲。ちゃんと弾けていて驚く。さすがはトリプルミリオン未遂をしたギタリストである。
11 ミチシルベ~a rode home~
ORANGERANGE5枚目のシングル。ZUNGZUNGが入ってたシングルのA面。当時のORANGERANGEには珍しいミディアムテンポのメッセージソングである。
迷うこととかたくさんあるだろうけど、ミチシルベに沿って歩いていけばいいやん。人生そんなもんやん。
ざっくり訳したらそういうことを歌っている。
ORANGERANGEの楽曲の中でも相当根強い人気を誇る曲である。若干の沖縄情緒を感じさせてくれるメロディーと文字の詰め込みの組み合わせが斬新だったのかもなぁ。
12 花
押しも押されぬ大ヒットシングルがここに登場。
ミチシルベと重ねてくるあたりにバラードゾーンにしようとしている魂胆が駄々漏れている。
売れただけあって、サビのメロディーが見事。これはヒットソングの必須条件と言えるだろうな。
この間のライブでもやってて、改めてメロディーの綺麗さに気付いた。こんなビックバラードメロディー書いてやりたいと思ってライブから帰ってさっそく鼻歌タイムを設けたけど何も出てこなかった。
ええ、そんなもんですよ、私のタレントは。
13 FULL THROTTLE
たまにはライブで盛り上がりそうな曲つくろっか!みたいなノリでできたのではないか。むしろそうとしか思えない曲。ぐでんぐでんに歪ませたギターがずっとなってる。
歌詞もリスナーを煽りまくる。
YO! YO! YO! YO! まだまだ騒ぎ足りねーぞ日本列島!
こんなライブで言いそうなことを、ヘッドフォンから流れる音楽とメトロノームに合わせて無音のスタジオで叫んでいたかと思うとこちらが叫びだしたくなる。
時間もごく短い。2分ちょいで終わる。アルバム後半のチェスト的立ち位置である。
14 祭男爵
これもシティボーイと並んで変な人気を獲得している曲。メロディーですね、やっぱ、印象残る曲ってのはメロディーが良いんです。
和太鼓がなって始まる、なんちゃって和テイストのロックナンバーである。文字に起こすとその薄っぺらさに驚く。
ジッタリンジンとホワイトベリーによって歌われている夏祭りのパクリじゃんって言われてるけど、まぁ大体祭りをテーマにマイナーコードで曲作ろうと思ったらこういう節になるよねって大目に見てあげたい。
15 papa
この曲を全く知らない人は歌詞だけを追ってほしい。
http://j-lyric.net/artist/a0025f3/l002f1a.html
後のノーベル文学賞受賞も夢ではないこのエキセントリックな言葉たちである。
こんなとりとめのなさすぎる言葉たちがアルバム内でも屈指の存在感を放つ曲に一役も二役もかっている。何が幸と出るかわからない。深い世の中である。
16 HUB☆STAR
あれだ、若いバンドとかヒップホップユニットによくある自己紹介ソングだ。
俺らスゲーリリック書いてんだぜ。マジこのフロー誰にもまねできねーYO!
これをもう3尺くらいスマートにした曲がHUB☆STARである。ORANGERANGE当人たちはこの曲を本アルバムのリードソングにしようと目論んでいたというから、自己評価というのは全くあてにならないんだなと思わされる。
いや、いい曲なんだよ?なんかこう、リリックが刺さってくるマイメンって感じで。
17 Oh! Yeah
マイベストソング in musiQ
歌謡曲にもありそうなわかりやすいメロディーに、見事に揃った片思いな歌詞。そして何よりORANGERANGEお得意の意味のない単語にメロディーつけちゃいました。
パラッパラッパッパ パラッパラッパッパ
君を探しに行くのさベイベー
サビはこの歌詞しかない。なんてわかりやすい。
当時のORANGERANGEのエッセンスがギュッと詰まった曲であると思っている。おすすめ。HUB☆STARとは違う。
18 SP Thanx
アルバム本編の最後を飾る曲はべたべたバラード。しかしこれもメロディーが綺麗。当時のNAOTOの売れる・ウケるメロディーラインを作るセンスは神懸ってるところがある。
ファンや親や仲間にマジ感謝な気持ちをORANGERANGEっぽく歌っている曲だ。ギターとかの音はならず、ストリングスを中心としたガチもんのバラードでアルバムを締めるあたり、売れる気満々である。
買う気も満々だがな。
19 ジパング2ジパング
アルバム最後のインスト曲である。
イヨォォォー!の声と言い、お琴らしき弦楽器の音と言い、どこか和を想像させる曲調である。そんなことよりも曲を通して断続的に流れるシンセの音が右へ左へと動き続けるから、イヤフォンないしヘッドフォンユーザーにはなかなかにやかましい楽曲だ。
NAOTOのイマジネーション遊戯曲。
総合考察
以上19曲が290万枚の痕跡である。
とんぼで均したら一曲当たり20万枚弱の売り上げということになる。恐ろしや。
以前、BUMPのアルバム二枚を解説したが、それに比べると19曲という曲数もあり、箸休めが全くないアルバムとはお世辞にも言えない。少なくとも、自分には言えない。
しかし、いろんな「それっぽさ」感じるにはうってつけのアルバムだ。
アルバムを通して一貫性がまるでない。バラードとそうじゃない曲ってわけるのは簡単だけれど、曲ごとに聴いていくと本当に一貫性がない。
スピッツやBUMPに代表されるバンド内にシンガーソングライターがいるバンドは、曲調がそのシンガーソングライターの人生に大きくゆだねられる。ある意味でその枠から出ることはない。
その点ORANGERANGEは曲を作る人と歌詞をつける人がばらばらである。曲を作る→バンド内で披露する→歌詞をつける→三人が歌うというプロセスを踏むこととなる。
このバンド内での曲の濾過が、曲の多様性を生んでいると思われる。
NAOTOの作る曲も大概ジャンルぐっちゃぐちゃなんだけれど。それにましてこのプロセスによって似たり寄ったりソングができるのを防いでいるところが感じられる。
また、バラードにしろアッパーチューンにしろ、メロディーが良いと売れる。耳に残る。この方程式を多分に証明してくれているのもこのアルバムだろう。
色々なところから曲の断片を拝借してコラージュしている点は否めないけれど、何度も言うように作曲なんて大体がそんなもんなんだから、素材をうまく料理したもん勝ちなのだ。
この点は大いに参考にさせていただきたいと思う。
何しろ今日は冬至らしい。
柚子もいいけど柑橘系縛りでいいならmusiQ聴いてみるのもいいかもしれない。
この記事仕上げるまでにmusiQを4週弱した。無病息災待ったなしである。