バイト中。
申し訳程度の休憩を彩らんと、昼飯を求めて街をさまよう。
時刻は午後三時。
大きい通りにでてみる。
ずっと気になっていたカツ丼屋があった。
今日はここにしようと、足を運んだ。しかし通り挟んで向かい側に、鎮座していた太陽のトマト麺。
荒んだ食生活に一筋の光を。
カツとの一瞬の葛藤の末、時間を有効活用せねばならないプレッシャーと健康志向に押され、気がついたら横断歩道を渡っていた。
最近各業界への進出が目立つトマト。
単体で完成されている感がするトマトを、鍋とかにする必要があるのかと考えてしまう。少なくとも過去の自分はそうだった。
煮るとか炒めるとかしないでも美味いんだからそのまま食べればええやん。
スープジュース鍋煮物にする意味とは。
ただ自分を振り返ってみると、最近もやし炒めと豆腐とキムチしか食べてない。最早トマトに物申せるような食生活を送っていなかった。
むしろどんな形態でもいい、トマトのような酸味と甘みを望んでいた。
スーパー行っても買わないことは明らかだ。
じゃあ、加工物・外食で補おうじゃないか。
そういうわけで麺である。
鍋どころじゃない折衷感。
店は2階。
通りに面した階段を上がった先にある。
階段の前にたった時点で上からジャズが聞こえてくる。
よくある武蔵だとか味彩だとか言うラーメン屋との趣の違いに焦る。
入ってみると店内はカフェだ。白を基調として、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
太陽のトマト麺なんてもっさい店名とは裏腹にシャレオツなオシャンティーだ。
トゥメイトウ・ヌードル オブ ザ サン
これがふさわしい。
店員さんに聞いたら太陽のラーメンシリーズがとにかくオススメということなので、一番人気の太陽のチーズラーメンを注文。
メニューには太陽のラーメンとはなんたるかが事細かに書いてある。
イタリア産有機トマトを一杯に3個使用。
リコピンの渦。
麺には豆乳を投入。
イソフラボンの嵐。
タレにはモンゴル天外天岩塩を使用。
ミネラルの海。
やっぱりどうやら健康にはいいらしい。
これだけで来てよかった。もうなにもいらない。
ちなみに他のメニューは、パイタン麺があった。トマトとはかけ離れた澄んだスープである。見渡す限り頼んでいる人はいなかった。常連が頼むんだろな、きっと。
5分ほどで到着した丼には、冬の北見の雪山を彷彿とさせるチーズの山が、紅蓮のトマトスープの上に乗っかっていた。色がチカチカ。
周りにはバジルと、江戸菜と言うらしい、漬けてない野沢菜がトッピングされ、赤い海には鳥肉と、細ーい例の豆乳麺が沈んでいた。
チーズを混ぜたらもう戻れないから、まずスープだけをいただく。
粗切りにされたトマトの食感が残っているスープ。
モンゴル岩塩というから、逸ノ城よろしくド級の塩っけが襲ってくるのかと思えば、そうではない。非常にマイルドである。店内の雰囲気に寄せて、トマトスープとしても単体でいただけるようなスープであった。
麺はチーズの雪山の下に沈んでいた。しかたなしに混ぜる。雪山がトマトの海に沈んでいく。まるで融雪漕。
融雪漕ってこれね。
チーズがとろけて、麺と絡まる。スープもよりまろやかになる。
スープピザ。スープマルゲリータ。こんな表現しか浮かばない自分の頭をいっぺんひっぱたいてやりたい。
鶏肉もよーく煮込まれていてとろとろだ。割とたくさん入っていて若者的にもうれしい。
トマト過ぎて飽きてしまうかというと、そうではない。救いの手は江戸菜が差し伸べる。
ぐでんぐでん書いたが、何がうまいってすべてはスープである。
スープがものすごく美味い。コクっつーか何つーか。麺料理のクオリティを左右するファクターとして、麺よりもスープが大きいなと感じた。
残念ながら、上品な舌も、豊かな言葉も持ち合わせていないために、これ以上どう表現したらいいかわからないんで、もう、食べてください。チェーン店らしいから。日高屋とか、よくあるつけ麺屋とかに行く際は、一度選択肢に入れてみて。
本当に美味いよ、月並みだけど。