お家どこなの?
錦糸町に住んでます!
錦糸町?実家?
いえ、実家は北海道です!
あら、北海道!札幌?
いえ、北見というところなんですけれどもね。
北見…北見…
北海道の左上です!オホーツク海の方です!
あー、寒いところね。
そうです!寒いところです!−20度とかになります!
食べ物美味しそうねぇ。
玉ねぎがすごいですよ!日本の玉ねぎの半分くらいは北見の玉ねぎです!
へえ…
あとホタテとかですかね。美味しいです。
いつから出てきたの?
大学からです。
あらそうなの。一人暮らし長いのね。
そうですね、5年目ですね。
自炊とかするの?
しますよー。節約と健康のためなら一肌でも二肌でも脱ぎますよー。
あはは…
社会人になり半年。何度この会話をしたことか。職場関係のおばさんと話すと、ほぼ間違いなくこの会話が出てくる。一言一句違わないレベルで、この会話である。あまりに鋳型で写したように同じパターンのために、相手が気になっていることが手に取るようにわかる。全部開示しちゃう。
一連の流れを話している度に、あぁ、北海道で生まれて錦糸町なんていうゴミゴミタウンに住んで良かったなぁと思う。
東京に住んでいる人にとって、北海道は憧れの土地・旅行で行く土地であり、錦糸町は住むに適さない街・フィリピンパブとロシアンパブの街であるらしい。すると、僕のこれまでの住環境が違和感でしかないようで、矢継ぎ早の質問が飛んでくる。
詮索されるのが嫌いな人には適さないだろうが、自己開示することに抵抗が少ない僕のような人にとっては、手っ取り早く相手の懐に飛び込む武器となる。
我々は自分が生きる環境の中で、無意識に平均値を出す。パターンを作る。ここに勤務している人はだいたいこの辺に住んでいる。この辺りに住んでいる人はだいたい地元はここだ。みたいな。
優秀な能力である。ざっくばらんなグルーピングは、大抵的中する。やがてそれが常識や普通と言われて定着していく。
興味や好奇心、知りたい気持ちは、常識と普通から外れたものに対して湧く傾向にある。
例えば宇宙。そもそも無重力という地球の常識をぶっ飛ばした原理が働いているし、広がり続けていたり、無限なのかもしれなかったりと、普段地球でのうのうと生きている僕たちの常識からは完全に外れている。だからこそ、多くの人を惹きつける。
つまり北海道出身錦糸町在住という住経歴は、都会の常識から外れているからこそざらっとした感覚を人に覚えさせ、質問大会が開催されるわけだ。
特に理由もなく北海道に生まれ育ち、特に理由もなく錦糸町に住んでいるが、足跡自体が人の興味をそそるもので良かったと思う。
あとは、自力でどれだけザラザラさせられるかだ。自分という人間の切り口を多く持ち、いろいろな面をちらちら見せて、コミュニケーションの引っ掛かりをいくつ提示できるか。
一期一会が溢れる世界で、二会、三会を多くの人と重ねられるように。好奇心そそるマンになって行きたい。