徒然雑草

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日持ちの裏に隠されたカンパンの知られざる長所

カンパン。

 

三立 缶入カンパン 100g

三立 缶入カンパン 100g

 

 

非常食の代表である。世のおばちゃんが据え置き型ゲームをすべてファミコンと呼んだように、非常食の事をカンパンと喩える人が一定数いる。それだけ世の中になじんだ非常食である。

非常食を常食にするのは罪だろうか。非常時の備えを常時食べるのは褒められたことじゃなかろうか。否。いつだったか防災の日にNHKのアナウンサーが言っていた。食べ慣れたものが非常時にあると安心感がそれだけで違うと。非常食もほどほどに消化するのが吉だと。

今朝、お腹が空いて起きたものの、食べ物は何もなかった。最近のスーパー通い怠惰のせいで、冷蔵庫とシンク下の収納がカラッカラになってしまっていた。さて、何を食べようか。空腹を飼い馴らすほどの仙人にはなれない。コーヒーだけでいい気もするが、お腹へっていないのに付き合いで食べるシチュエーションを考えたら、空腹時、一人で優雅なブレークファストはどれだけ貴重なものだろうか。

果たして、僕はカンパンに手を伸ばした。賞味期限は遥か彼方に過ぎ去っていたが、カンパンである。食べられないはずがない。

一応、スマホでアレンジレシピとかを見てみる。カンパンレアチーズケーキ、カンパンコーンスープ、カンパンピザ。大和撫子の如く七変化するカンパンに目をチカチカさせたが、なぜ今カンパンを食べようとしているかという原点回帰をしたところ、すべてをあきらめてカンパンをカンパンとして食べることにした。

そもそも、非常食である。何がアレンジレシピだ。全く。非常という言葉の意味を分かっているのか。地震雷火事親父。日常のかけらもないエトセトラが我々に降りかかってきたとき、出てくるのがカンパンである。何がレアチーズケーキか。そんなん作れるなんて日常も甚だしい。いやむしろ360度回って非日常だ。

我が家のタンスと冷蔵庫に食料が何一つないという、お弁当をせっせか作る男の子のお家的非常事態に差し伸べられたカンパンの手。非常食に対する期待が低かったからだろうか、猛烈に美味しい。噛めば噛むほどに薫る小麦粉の素朴な風味。たまに当たる氷砂糖の甘味。レアチーズ云々なぞにしないでも全く問題のない、むしろおいしく食べられる代物であった。

日持ちするという最大の長所のために、もしかしたらカンパンの他の良さが覆い隠されてしまってきたのかもしれない。例えばイチローが書道2段の腕前だったとして、現状誰もそっちには見向きもしないだろう。それはあまりに野球という長所が凄すぎるからであって、書道2段も十分凄いのだ。

カンパンは美味しい食べ物なのだ。日持ちはする。日持ちはするけど、それだけじゃない。日持ちに匹敵してやまないおいしさを秘めているのだ。侮るなかれカンパン。

試しにオレオとかリッツとかに伸びるその手を、カンパンに伸ばしてみるといい。新しい味覚の水平が、あなたの前に広がるだろう。

そう、甲板に出た時のように。