徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

生贄の摂理

遊戯王カードで強力なモンスターを召喚するには、生贄を捧げなければならない。モンスターごとに星が設定されており、四つ星までは生贄なしで召喚でき、五つ星から六つ星は一体、七つ星と八つ星は二体の生贄が必要だった。生贄なんて恐ろしい言葉をよく少年時代に使っていたものだと思う。

弱を犠牲に強を。

遊戯王カードに見られたこの哲学は姿を変えて今僕の目の前に現れ、ほとほと困らせている。


休日。朝から晩まで働いたウィークデーをくぐり抜けた先にたどり着くオアシス。don't look back in worker. 睡眠と趣味、休息と活動。休日の過ごし方と一括りにされてしまうが、何が理想なのやら考え出すとたちどころに二律背反のラビリンスに迷い込んでしまう。

精一杯優先順位をつけて休日を過ごしていこうとする。これはやりたい。あそこにも行きたい。買いたい。早めに休みたい。

順位が高い事柄がどんどんと順位が低い事柄を上書きしていく。眠りたいけど眠るよりやりたいことがあるから起きるし、家で映画見るより買いたい物があるから街に出かける。

 低順位は高順位の召喚の生贄となり、1日から消去されていく。

果たして自分は何がやりたいのか。やりたいことの星の数を決めるのは個人の裁量である。生まれながらの強力モンスターは、休日に存在しない。だから、やりたいことに八つ星とかを付けて、たくさんの生贄を捧げて召喚したものの実は全然やりたくないことをやってたりすると、こんなに生贄捧げたのになにやってんねん…ってげんなりを引きずったままウィークデーの嵐に巻き込まれることとなる。


教訓を生かして真剣に優先順位の選定に乗り出す。しかしそのうち、どうせ休日なんだから考えんのやめよ…って元も子もない考えがむくむくと首をもたげて、とりあえず何にでも対応できるように無意味な早起きをしてしまう。どうやら僕の中で睡眠は四つ星以下の弱小モンスターらしい。何もしないでも何かが出来る気がするから、起床の岸には早朝にいつも漕ぎ付ける。そして夜になると順位が一変し、あらゆるものを生贄に睡眠を召喚するのだ。健康ったらありゃしない。


風呂…明日の朝でいいやって横になる。身体がずずずーんとベットにのめり込み、足から疲れが回ってきて瞼を落とそうとする。異常な遅さのシャッタースピードで瞬きが繰り返される。

こりゃあだめだって思うや否や、夢心地。生贄に捧げられているのはきっと僕自身だ。

そしてだらしのない文章は眠気のせいだ。