徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

長時間労働を取り巻く意見の相違を見て、教室の窓を開けるか閉めるかで揉めた秋を思い出した

僕は開けて欲しかった教室の窓が、寒いといった女子が数名いたために開けられることはなかった。小学4年生の秋である。

2時間目と3時間目の間は、普通は10分のところ、20分間の休み時間となる。20分。今考えたらわずかな時間であるが、当時はドッジボールでも鬼ごっこでも、なんでもできた時間であった。校庭までダッシュで行って、追っかけっこだけして帰ってくるなんてこともしていた。風の子元気の子だったのである。

火照る身体を机と椅子にねじ込んで、僕たち鼻水もとい鼻汁ダラダラ系男子達は3時間目を受けている。暑い。熱い。暑い。少年達はぽかぽかだが、20分間は誰にでも平等に訪れるわけで、少女たちは同じ時間をシール交換やらお絵描きやらに費やしていたらしい。妙に机と椅子がフィットしている。授業が始まってしばらく後、ガキ大将が声を上げる。

せんせー!あつい!まどあけて!

先生も先生で子供達の遊びに付き合ってしまったりしているから、そこそこに暑い。

おー、〇〇が暑いって言ってるけど、窓を開けていいかー。寒い人いるかー。

とかなんとか言いながら窓際に近づく。

せんせー。あたしさむいです。あ、あたしもです。

女子が制止をかける。なにしろ彼らが全身運動をしている間、彼女たちは至極文化的な活動をしているのだ。サッカー部と手芸部を同時に飼いならしているに等しい。先生はコントロールに困る。だがたいていの場合の結論は決まっている。寒い人に合わせるのだ。冷えは万病の元。寒いと冷えは通ずるわけで、寒い人が1人でもいれば、その集団に冷気を入れる判断はできない。これは当然である。八甲田山の雪中行軍でもないので、寒いっつって進言したやつを切り捨てていく苦渋の決断をするわけもない。

そうして男子たちは、下敷きをこっそりパタパタさせて、なんとか涼を取り入れる。気づけば、暑さは忘れている。

秋口は毎日のようにこのせめぎ合いをしていたものだった。懐かしい。

長時間労働の議論を見て、何故か思い出した。