徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

改めて9.98のレースを観てみて

通信制限にかまけてレースを観てはいなかったのだけれど、いよいよ家に帰って来てレースを拝見した。

9.99で止まった瞬間と、公式で9.98が出た瞬間。二度の歓声。そして、喜びを表現しきれない桐生の姿。酔っ払った頭を存分に揺さぶってくれた。

もはや、何が嬉しいのかわからない。別にそこまで9秒台を四六時中願ってきたわけでもない。でも動画を見て、公式で9.98が表示された瞬間の歓声を聞くと、「いやぁ…うわぁ…」とため息でも歓声でもない何かが溢れてくる。なんなんでしょうこれは。

速いなぁ…もそうだし、よく頑張ったなぁ…も、そうだ。もしかすると、羨ましいなぁ…もあり得る。多田に先行されてからの中盤。ひざ下を多少降り出しても地面を捉えられるハムストリングスの強さ。あぁ、ハム切れるよ…と他人に思わせながらぶっちぎりの疾走を見せる逞しさっていったらない。よくあの感じで走れるものだ。

いや、どうだっていい。そんなことどうだっていい。

「うわぁ…」こそ、真実だろう。9.98が表示された後、ホームストレートを逆走して来た彼の姿こそ真実だ。「自己ベストを出せて嬉しかった。」それが真実だ。高校までのトレーニングを無に帰することなく、大学でもコンスタントに成績を残し、最後の最後に壁をぶち破ったことは、きっと彼の人生に途轍もない影響を及ぼすに違いない。

日本陸上における歴史的瞬間をビデオだとしてもリアルタイムで感じられたこと、幸せに思う。

改めて、改めておめでたい。