徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

屈斜路湖に面した三香温泉という秘湯について

今週のお題「私の癒やし」

我らがオホーツクが誇る湖といえばサロマ湖である。日本で三番目に大きい湖。そのくせ冬になれば全面結氷なんていうわけわからん芸当を見せてくれる湖。

サロマ湖の陰に隠れて目立たない存在ではあるものの、屈斜路湖の美しさたるや筆舌に尽くせないものがある。火口に水が溜まってできたカルデラ湖であり、絶妙な場所に配置されている中島が美しさに拍車をかけている。

弟子屈なび_観光 屈斜路湖

 

屈斜路湖面するような形で、三香温泉はある。

www3.plala.or.jp

三香温泉のホームページ

 

計2回、僕は三香温泉に行った。最初は実家の向かいに住んでいた大学教授がよく行く温泉宿だからという理由で2世帯にてお邪魔した。また、再訪は大学教授一家と我が家と親父の友達の漁師一家の3世帯でだった。

二度目が多分10年ちょっと前になるかと思う。しばらく行っていないのだが、どうやらまだ変わらずに営業しているらしい。嬉しく思う。

 

思い出に補正されているところも多々あるかもしれないが、僕が浸かった温泉の中で、ここの温泉のお湯が一番気持ちいい。数多の温泉が、三香温泉のお湯に挑んで行っては散っている。

何しろ10年以上前だから確かな記憶があるわけではないのだが、なんともいえない滑りを帯びたお湯が身体に纏わりつくようであったことを覚えている。乾ききった身体に経口補水液を流し込んだような浸透の仕方を、三香温泉のお湯はする。いつまでも入っていられるような感じがした。

 

風呂から上がって、ご飯を食べた後は、ご主人さん一家と薪ストーブを囲んで団欒の時間があった。屈斜路湖周辺はアイヌが多く住んでいるか何かで、ご主人さんもアイヌについての造詣が深い。アイヌとは…という話を聞いた記憶がある。そんな中、親父の友人は愛国心がアイヌに変なシンパシーを覚えたのか、猛烈に右寄りの思想を暖に向かって舌鋒鋭く語り散らかしていた。

季節が冬になるとアイヌの楽団が屈斜路湖のほとりでコンサートを開く。マイナス20度に迫る中、かがり火の向こうのステージでなっていたアイヌの音楽は恐ろしく神秘的で、類を見ないものだった。

そして馬鹿みたいに星が綺麗だ。街灯なんてない。街がないからあるはずもないのだが、とにかく漆黒が訪れる。コンサートから帰ってきた後、三香温泉で飼われているハスキー犬にどやされながら見上げた空は満天そのもので、吸い込まれそうな恐怖感すら覚えるものだった。懐かしい。

 

別に何に疲れていたわけでもない、あっぱらぱーな頃何度か行っただけの温泉ではあるのだが、どうも記憶に色濃く残っている。

三香温泉のお湯と、星と、ストーブ。

親父たちは温泉にお酒を持ち込んでいた。燗の日本酒だっただろうか。温泉の中でアルコールを摂取するのは褒められた行為じゃないのだろうが、あれこそが本当の愉しみ方のような気がしてならない。

僕も上京して、いよいよ行く機会が少なくなってしまったが、いずれはまた行ってみたい場所である。

うんと冷えた冬の日にでも。