徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

Always with music

しばらく前にイヤフォンを失くしていた。

これまで、あらゆるイヤフォンと喧嘩別れをしてきた。最期まで添い遂げられたイヤフォンなんてない。あらかた大抵、失くす。

前回も例に漏れなかった。当たり前のように僕の前から姿を消し、探すけど見つからず、探すのやめたら出てくるだろうと思いながら諦めて、それっきり。引っ越す少し前に失くした。かれこれ2ヶ月はイヤフォンをしていなかった。

別に不自由はなかった。イヤフォンをすると好きな音楽を聴く。だから、好きでもなんでもない雑踏とか往来の音を聴くことがなくなる。規律のない音に触れる時間が少なくなるのだ。規律のない音は集中をもたらす。歩いている時がまさにそうだ。細工をしていない音にまみれながらリズムを作る。淡々と歩く中で、考え事をする。至高の時間。

 

でもなぜか、今日不意にイヤフォン欲に突き動かされた。いてもたってもいられなくなって昼休みに外出し、近くの電気屋でイヤフォンを買った。Bluetoothのイヤフォン。大した値段もしないやつだ。

昼飯もそこそこ、とにかく何か聴きたくなって、ビリージョエルをかけた。

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KANが「愛は勝つ」でパロディーをぶちかました曲、「Uptown Girl」。

 

脳みそが溶け出すかと思った。

カナル型イヤフォンの先端から鼓膜を直に震わせてくる音。デンプンの甘さしか知らなかった人間がグラニュー糖と出会ったような衝撃だった。軽快なメロディーに乗った、ビリージョエルの突き抜けるような高音。しばらく動けなかった。キマっていた。

 

帰り道、何ヶ月かぶりに音楽とともに歩いた。川沿いの道で音楽を連れるのは初めてだった。

やはり、気持ちよかった。

鴨がバチャついているかもしれない。猫が鳴いているかもしれない。あらゆる音をふさぎ込んでの、Uptown Girl。転居後最高速の家路だったように思う。ご機嫌極まりない。

 

好みの外や無秩序にはない、圧倒的なわかりやすさが音楽にはある。何語で歌われていたとしても、歌詞がなくても、音が秩序立っている時点でわかりやすい。

久しぶりに音楽に浸り、何事もバランスが大事だなと改めて感じた。

オーガニックだらけでもダメだし、ケミカルだけでもダメなのである。

 

けど、明日からしばらくはケミカルマンになる。