徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

あいみょんの「マリーゴールド」について

そもそも、あいみょんってこんな人でしたっけ。


あいみょん - マリーゴールド【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

 

僕の知りうるほんの少しのあいみょんは、腹から声だします系のしっかりした声質に結構エグい感じの歌詞を乗っけてバチバチに毒吐きちらすタイプの人だと思っていた。それこそミオヤマザキの並びというかなんというか。ミオヤマザキに関しては毒が一周回って面白くなっている。いい芸風だと思う。

 

あいみょん。そう、この曲はそこかしこでよく聞いていた。


あいみょん - 愛を伝えたいだとか 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

 

最初聴いた時に、めっちゃ病んだMISIAみたいな曲だなぁって思った。なんでMISIAっぽいと感じたのかはわからない。メロディでしょうか。終始後ろでグニグニなってる電子音がいい感じにチープさをトッピングしててとても良い。

 

言ってしまえば「愛を伝えたいだとか」からしてめっちゃキャッチーで、サビとかは明らかに売れ線のそれだ。冒頭のフランジャーらしきエフェクトかけてシャギシャギさせたストローク4連発で全て許したくなる。

しかし、この度聴いた「マリーゴールド」。これはなんだ。

一言で言うなれば、素直。

音楽には、いや、作曲界には、カノンコードという現人神がある。パッヘルベルなるスーパーマンが発明したのか、彼のアレが有名なのか、どうでもいいのだけれどとにかく「パッヘルベルのカノン」のコード進行に則ってメロディーを作ったら大体どんな曲でもめっちゃいい曲になるってそれである。

「マリーゴールド」はカノンコードをAメロとサビでヘビロテさせている。

カノンは有用でありすぎて、どんなメロディーを取ってもどこかで聴いたことのある旋律になる。ただ、欠点を補ってありあまる親しみやすさも生まれる。毒素吐き出し系歌手だと思っていたあいみょんが、突然清涼感マックスポカリアクエリアスなんでもどうぞって曲を歌っていた衝撃。あいみょんサイドの巧妙なマーケティングに裏打ちされた作品としか思えない。まんまと意表を突かれた。

麦わらの帽子の君が

揺れたマリーゴールドに似てる

なんだそれ。全盛期のAqua Timezかよ。カルピスのCMにでも抜擢される気なのだろうか。爽やかすぎて心が痛い。怪我していないと思っていた場所に塩を揉み込まれた結果古傷が発見されたような気持ちだ。無限にすっ転がってそうなメロディーに手垢がべったりくっついてそうな直喩を大声で叫ばれたときの感情の揺れ。なんだこれ。ほんと。

そうだ、フォークだ。これはフォークなのだ。

誰も傷つけず、自分も傷つかない。過激じゃない牧歌的なフォーク。昨今の日本ではいきものがかりの放牧以来忘れられていたような音楽。カノンがそうさせているのか、歌詞がそうさせているのか。鶏が先か卵が先かみたいな話だ。どうあれ尊い。hip-hopにかぶれた音楽が蔓延る中のアンチテーゼとしても受け取りましたよ僕は。

 

ぶっちゃけ意表を突かれたからこんな気持ちになっているだけで、冷静になってみたら誰でも作れそうっちゃ誰でも作れそうな曲にも聞こえる。いや、誰でも作れるに違いない。5分やるから曲作れって言われたら多分僕はこんな曲を作るだろう。でもそれが認められている。正解とは。売れるとは。売れたいのか。

あぁアイラブユーの言葉じゃ

足りないからとキスして

ほんとなんなんだこれ。