徒然雑草

踏みつけられるほどに育つ

110mHで起こっている事態について

人知れず、凄く凄いことが起こっている。ヤバすぎてヤバい感じである。日本記録で二人飛び込んで、着差ありで決着。普通じゃない。それこそ、同じレースの中で、ハキームと桐生が9.97を出してるのと等しい。

ここ数年、トッパーのレベル上がってきてるよねって話は、5年くらい前から界隈で話されていたことである。13秒台出しても日本選手権の決勝に行けない。13.5台6台あたりがベストな人間がひしめき合っている。わずか10年前だったら日本チャンピオンの記録がその辺の記録会でぴょこぴょこ出るようになっている。ちなみに400mの日本記録は28年前のものだ。お分かりいただけるだろう、この異常事態。


ヒカルの碁をご存知だろうか。なんの変哲も無い小学生ヒカルが、おじいちゃんの家の納屋にある碁盤を見た際、平安時代の天才棋士・藤原佐為に取り憑かれてからというもの明けても暮れても囲碁囲碁囲碁。ふと気がついたら天才棋士進藤ヒカルとなり、碁界鳴動の旗頭として、やれ棋戦やれ碁会所と八面六臂の活躍を見せるアレだ。

その作中、桑原名人がこんなことを話す。

「のう、天野くん。知っとるか?碁は一人では打てんのじゃよ。等しく才長けたものが2人いるんじゃ。そう、2人揃ってようやく神の一手に…一歩近づく。」

ちなみに天野くんは作中の囲碁新聞週刊碁の記者である。


2人必要なのだ。等しく才長けたものが、2人。

陸上なんてどこまでも個人プレーで、1人で完結できる競技で、勝手に頑張って勝手に記録が出るようにも思う。だが実情は違う。日々の練習のなかの半歩、100分の1秒、そこに賭せるのは、等しく才長けたものの存在があるからこそである。

遠くの国で、どこかの県で、隣の街で、隣のレーンで、必死こいている等しく才長けたものがいて、初めて自分も半歩前に出る努力ができる。ただ頑張り、ただ走るなんてさらさら無理なのだ。だから、強くなりすぎたり、負け続けたりして、等しく才長けたものの存在が見えなくなってしまうと、脆い。レベルはどうあれ、等しく才長けたものを見つけられれば、ぐんぐん伸びる。そんなものだ。


これからの110mHはどんどん面白くなる。新陳代謝良く、次々選手が現れ、レベルが上がっていくことを心から願っている。